RM自身が出たいと思っていた番組
韓国tvNの教養バラエティー番組で、RMがMCを務めています。タイトルは
「知ってたら役に立たない神秘の人間雑学事典」略して「알쓸인잡」(アルスルアンジャッ)。
出演者は
…という6人が人間を巡るテーマでひたすら語る番組、のようです。
(ところで6人中女性が一人って、あまりにもジェンダーに偏りがあると思う)
これまでに政治経済や法律をテーマにしてきたようです。制作はtvN、プロデューサーは「出張15夜」のナ・ヨンソクPD(今も関わってるのかは不明)。
元々RMがこのシリーズに出たいと望んでいたシリーズらしい。ティーザー映像などでRMは、「憧れてた番組で。望めば叶いますね」とはにかみ、「人生は長いのに、知的な欲求や知識に対する探求や思索がなしに人生を生きるとあまりにもつまらなくて退屈しそうです」と、意欲を語っていました。
で、TVingという韓国独自の配信プラットフォームにありますが、日本から視聴不可。ただ、tvNのYouTubeチャンネルなどで、細切れではありますが公開されています。
なので、ここではYouTubeでの映像を元に内容紹介と一部訳してみます。
初回のテーマは私が映画にしたい人間
第一回目のテーマは「私が映画にしたい人間」でした。
それぞれのチョイスは
- 天文学者チェギョン:NASAの火星ヘリコプターのプロジェクト・マネージャー、ミミ・アウン(MiMi Aung)さん
- 小説家ヨンハ:韓国の古典小説「洪吉童(ホン・ギルトン)伝」を書いたと言われる李氏朝鮮時代の文人、許 筠(ホ・ギュン)
- 物理学者サンウク:進化論を提唱したチャールズ・ダーウィン
- 法医学者イ・ホ:古代ギリシャの医師、「医学の祖」と呼ばれるヒポクラテス
でした。が、ヒポクラテスは時間が足りずこの回では話せなかったようでep2に持ち越し。この回の収録は11時間ぐらいかかったらしいんですが、どれだけしゃべり倒したのか…。
NASAのミミ・アウン 成功した瞬間のセレモニー
火星探査でヘリを使うプロジェクト。何が大変かというと火星には大気がほとんどないから、だそうです。浮力を得るためには空気がいるけど、わずかしかないから大変ってことですね。それで、いままでは車両が探査をしてたんだけど、スピードがやはり遅い。火星のわずかな大気でも飛べる、軽くて、プロペラが超高速回転するようなヘリの開発が求められていた、ということです。
天文学者のチェギョンさん、ミミ・アウンさんが管制室で同僚たちとともに、成功した信号を待っている場面を映画にしたいと言います。
チェギョン:成功した!って信号が来たとき、わあ~ってみんなで歓声を上げて…
この方が書類を、机に書類をいろいろ置いてたんですけど、知らせを聞いて即「みなさん、私たちが重大な仕事をしました」という短いスピーチをして(その書類を)破るんです。(失敗したら読む予定だった書類を破り捨てた)そのセレモニーをした場面が話題になったんですけど、ほかの科学者たち、まだ夢を達成できていない科学者たちが自分のそんな場面を想像したら、目標が遥か彼方にあると感じるときに、助けになるんじゃないかと。
科学者たちはそういうのは苦手ですけど、そんなレモニーがもっとあって欲しいんですよね。(韓国で独自開発したロケット)ヌリ号の打ち上げ成功したときにも、関係者の方たちが、わーっと喜ぶかと思ったんですが、あまりに硬直した雰囲気で…。ある方が小さく書類をわあって投げたんです。それで、動画のコメント欄に「私たちの税金も惜しくないね」っていうのがあって。
RM:僕は本当に(科学者の方たちが、セレモニーでそうやって)カッコ付けてくれたらと思います。僕は天文学者がカッコ良くみえて、天文学者になりたかったんです。そういう神話的な場面をトップの方たちが作って下さったら、第二のミミ・アウンさんが出る小さなきっかけになるんじゃないかと。
韓国人なら誰もが知るホン・ギルトン その作者はスターで扇動家?
日本だったら「山田太郎」とかになるんですかね。市役所にある書類の記入例で必ず例になっている名前がホン・キルトン(女性ならホン・キルスン)らしいです。
ウィキから引用
同書はハングル(正確には訓民正音)で書かれた最古(1607年ごろ)の小説。作者は学者で文人許筠。日本で言う桃太郎のように韓国、北朝鮮の人で知らない人はいないというほど一般的なヒーロー。
庶子出身で、超能力を操って弱気を助け、腐敗した官僚たちをやっつける庶民の味方です。アニメやドラマなどでたびたび取り上げられます。
(作者はホ・ギュンと言われるけれど、実際のところは不明だそう)
ホン・ギルトンは身分制の厳しかった朝鮮で、低く見られる庶子出身。だからこそ庶民のヒーローになるわけですが、ホ・ギュン自身はものすごい名門の出身だそうです。
ただ幼い頃に父親が着けてくれた家庭教師が庶子出身の先生だったらしい。それが理由なのか、庶子や妓生、当時の朝鮮ではアウトサイダーだった仏教の僧侶たちとも親しかったと。
そして性格?には難ありで、いろんな職をまかされるものの、遊びすぎで次々とクビに。ところが彼は一目置かれる人物になるのは、中国からの使者が来るたびに「ホギュンを呼べ」と。彼の教養と遊び上手さが評判になったためらしいです。
当時の王は光海君。王にはすごく好かれるのですがそのエピソードのひとつが「中国で、王の正当性について悪口を書いた本が出回っていました。私が全部処分してきましたからご安心を」と王に伝え、王が大変喜んだというもの。しかし、朝鮮王朝実録によると、これは詐欺。「悪口を書いた本」はホ・ギュン本人が書いたものだったらしい。
ヨンハ:本人がフェイク本を作ったんです。そのあとそれを買って破棄したかのように。王が騙されたんですよね。ほかにも、当時は世論の形成に上奏文が大事だったんですけど、いうなれば自分の家で書き込み部隊を作るんです。食事させて、泊まらせて「早く書けおまえら」って言って。
RM:扇動家じゃないですか…!
ヨンハ:そういう意味で、ホンギルトン伝は文学作品というよりは、扇動文書だった可能性もあった。
ホ・ギュンはその後反乱に加担したとされ死刑になるんですが、刑務所に連れて行かれる道すがら、人々が反対のデモをしたそう。
RM:すごいカリスマと…スターですねスター!
ヨンハ:ホ・ギュンが何度も主張したんです。国が良くなるには人を公平に使わないと行けない、差別はなくならなければならないと。
RM:それは魅力的だったでしょうね。当時。賤民たちやそんな人たちにとっては。
映画化するなら…って話でナムジュンのアイデアは、「死ぬ寸前の場面から始まって、目を開けてみたら現代の大統領の息子になってた」
またキャスティングとしては「トム・クルーズでブロックバスター狙う」などと絶好調でした。
チャールズ・ダーウィンの悩み
物理学者(専門は量子力学)のキム・サンウクさんのチョイスはチャールズ・ダーウィン。「種の起源」を出版して神が万物を創造した、とされてきた当時の常識を覆しました。
ここらへんはみんなよく知ってる(はず)なので、ウィキなどを参照していただければ。
会話で面白かったところ。
チェギョンさんが「コペルニクスにも似てますね」と、地動説の話をしたところから。
イ・ホ:天体の回転についての(彼の)論文のタイトルがRevolutionなんだけど、どれだけ驚いたか、これば「革命」という意味になったんですよ。
RM:ああ、レボリューションが元々「回転」なんですか?それがあまりに革命的だったから、革命って意味に変わったんだ…!
サンウク:地球が回ってるということが革命的だったんですよね。
RM:わあ~
サンジュン:こういうとき、この番組して良かったって思うね
RM:ですよね。「レボリューションが元々回転だって知ってた?コペルニクスがさあ」って言えば
雑学王のSUGAが喜びそうなネタだ。
しかしサンウクさんによれば、地動説は聖書の一部分だけと矛盾するけれど、進化論は聖書全体だけじゃなくて人間についてのあらゆる「物語」を否定するもの。より革命的だったと言えるかもしれません。
RM:進化論というのは、シンプルに何を語っている本なんでしょう?
サンウク:進化論というのは、私たちの周りにある生物たちが「変化する」ということを第一に言っています。それ以前は、いま見ているままの姿でいると思われていたわけです。
しかし進化論では進化をさかのぼっていけばたったひとつの生命体に行き着くと。それが自然に起きてきた。
進化の過程で、誰かがデザインしたり、命令をする必要はなかったということなんです。
神から医学を独立させたヒポクラテス
さて、時間切れで入らなかったイ・ホさんのチョイスは医学の祖ヒポクラテス。ep2での放送分なんですが、こちらに入れておきます。
有名なのはヒポクラテスの誓い、だけどどういう人かは分からないというみんなに
「神から医学を独立させた人」と言います。
イ・ホ:当時は(病の原因は)神による刑罰で、(治療は)神に祈らないと行けない。治ったら神に感謝する。
でもヒポクラテスは、病には何か原因があると考えたんです。同一の症状には同一の原因があり、治療法もあるはずだと。
ここで、「4体液説」という言葉がサンウクさんから。
ウィキより引用
(人間は)血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の四体液をもち、それらが調和していると健康であるが、どれかが過大・過小また遊離し孤立した場合、その身体部位が病苦を病む
ここから展開する話も面白かった。
サンウク:いま聞いてますと、神を否定するためには何か物質というものが必要なんですね。西洋の哲学でも4元素説がありますよね。いまからみると、話にならないような素朴な話なんです。
それ以前は神が創造した神秘的な物質で(世界が)できていなきゃいけなかった。命の物質、気質、霊魂、精霊…
そうではなくたった4つ。とても馴染みのある火・水・空気・土。この調和と均衡が世界の万物を作る。人間の健康も、その4つが支配する。
神は必要ないってことなんです。神を否定するアイデアを哲学から持ってきたってことですね。
当時は解剖ができなかったので、病の原因を探るためにとにかく観察。患者の便を食べて味をみることもあったとか。すげー。
「お題」の映画にしたい人間についてはここまで。その合間に脱線して盛り上がった話は、長くなったので別にします。さすが収録11時間…。