はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

日本語訳)音楽評論家・キム・ヨンデさんが解説する各メンバーの魅力

文芸誌(Web版)に書かれていたものを訳しました。

「BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか」の著者、キム・ヨンデさんが、「今ここのアイドル−アーティスト」という題で連載している10回目です。

 

www.weeklymunhak.com

 

BTSの何が、今日の彼らを可能にしたのかを明快に説明する方法はないだろうが、一つ確実なことがあるとすれば、それは7人の出会いと成長が可能にしたという点だ。」

 

ただの偶然か幸運かそれとも運命だったのか。7人はお互いを「運命の人にする」(逃げ恥・みくり母)ために努力してきたんでしょうね。(新年スペシャル見て思い出した)

 

全文訳はこちらからです。↓↓↓

BTS :7つの地図

 

 

 ジョン、ポール、ジョージ、そしてリンゴ。なぜよりによってポップ史上最も偉大なグループになるビートルズのあの4人が、まさにあの時期・あの場所にいることができたのかに答られる人はいない。そこに特別な論理はない。我々はそれを幸運と呼ぶこともできるし、或いは運命ということもできる。

 

BTSはKPOPの歴史が生んだ最も巨大なグループだ。おそらく彼らが作り出した業績や記録を羅列するだけでも、何冊かの本を書き上げることができるだろう。私はすでに「BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか」を通じ、彼らの音楽に集中しようとし、BTS現象の本質を語ろうとした。しかし抜け落ちたものがあった。それはまさにこのグループを可能にしたメンバーたちに関する話だ。

OT7。ファンたちは7人で構成されたBTSをそう呼ぶことがある。7人の才能と個性が集まりBTSが可能だったという意味が込められている。なんと直感的で当然の結論だろう。BTSの何が、今日の彼らを可能にしたのかを明快に説明する方法はないだろうが、一つ確実なことがあるとすれば、それは7人の出会いと成長が可能にしたという点だ。そこで私は、BTSが「Dynamite」と「Life Goes On」で世界を征服したまさに今、この7人の各々の才能と個性について詳しく見てみようと思う。

 

RM

 BTSはそのキャリアの本質において、ある意味RMと同義語と言っても間違いではなさそうだ。BTSが今の位置まで来られた理由も、彼らがあれほど多くの誤解と偏見を受けなければならなかった理由も、全てRM、すなわちラップモンスターと呼ばれたこの若いミュージシャンでリーダーの存在が始まりだったからだ。

彼は理知的で鋭敏なミュージシャンだ。しかし知識を自慢したり衒学的な言葉を駆使するラッパーという意味ではない。彼は韓国のどのハードコアラッパーと比較しても遜色ないほど鋭い洞察力を持つが、その言葉遣いは、KPOPやアイドルファンたちが無理なく受け入れられるほどには思慮深く練られている。彼はあたかも高い波に憧れうねりながらも、最後には静かになる波のように、BTSという海の水平線を常に一貫して維持する存在だ。

 しかし人々がその本質と魅力を理解するまで、彼にはかなり多くの試練が必要だった。ヒップホップアイドルを標榜した「ラプモン」は、しばしば彼の故郷であるヒップホップコミュニティーから批判を受ける存在だったし、彼への疑いと偏見は、常に彼をさらに高めるモチベーションでもあった。ラップにふさわしい素晴らしいトーンと発声を持つ彼の声は、BTSをKPOPアイドル史上最も高い水準のヒップホップグループにした力だ。ラッパーとしての卓越した技量と絢爛なライム能力は、多様なスタイルのヒップホップと無理なくマッチするが、特に「Her」のようなオールドスクールヒップホップとの相性は抜群に素晴らしい。RMの歌詞は鋭く痛烈だが、同時に成熟している。「IDOL」から「Persona」に至るまでのように、彼はアーティストでありアイドルである二重性と、人間が持つ両面性に常に注目しており、これをいつも熟練した方法で昇華させる。ソロアーティストとしての彼は、ハードコアなヒップホップ以外でも都市的感性が込もった叙情的な曲を発表してきたが、特に「mono」はBTSの音楽とはまた違う意味で、RMの芸術性を確認する機会になった傑作だ。「Forever rain」を聞かずに、RMを全て理解したと言うことはできない。

 

SUGA

 シュガはBTSの音楽的スペクトラムにおいて、RMというリーダーと完璧なコントラストを作る、もう一人の重要な音楽的な要だ。BTSの音楽を、青春の彷徨と成長の物語と規定するなら、その最も重要なストーリーテリングと心情の一部は明らかにシュガのものであり、シュガ の音楽性と内なる戦いは、BTSの物語とキャリアにそのままま一致する。

彼の尖ったメッセージは躊躇いがなく、露骨だったり低俗だったりする表現がなくとも、聞くものの心を動かし鼓動を速める。誰もが心の中に持つ怒り、不安、憂鬱、または劣等感などを彼は避けず、遠回しでなく直接的に溢れさせる。「Cypher pt,3」の斬るような攻撃、「引越し」の悔恨の混じった決意から、私たちはシュガがどんなミュージシャンなのか、いやもっと正確にはどんな人間なのかを、まるで彼と会話をしたかのように感じられるようになる。そうして結んだ彼との関係は、BTSの音楽を聞く人たちの心を悩ませるし、居心地悪くしたりもするが、結局はより夢中にさせ、より切ない何かに膨らませる。

「Shadow」はアーティストであり人間シュガのアイデンティティーだ。成功の光、その分だけ大きくなる影、歓喜と対になる不安。それにも関わらず絶えず自分に向き合い肯定しようとする希望に満ちた努力。シュガはこのように率直で複雑だが、いつもつきまとう恐れを希望に変えられる力を持ったアーティストだ。

 

ラッパーというポジションを任されているが、シュガは多才多能なミュージシャンだ。練習生時代に作った曲として知られている「Tomorrow」は、BTSの永遠のテーマである「絶望の中に咲いた未来への希望」を扱った名曲で、BTSの音楽の「違い」を象徴的に示した曲だ。シュガの音楽は絶えずその深みを増していて、大人びた諦念の感情を淡々と描いた自伝的ミックステープ「D-2」は、彼がミュージシャンとしてだけではなく、人間として成長してきたことを教えてくれた。彼は常に自ら証明しようとし、証明しろと迫る者たちを嘲笑ったこともあったが、今はその全ての葛藤を超えてミュージシャンとして新たな歩みを始めている。

 

JIN

 2019年LAローズボウルに鳴り響いた「Epiphany」の感動を覚えている。ピアノ一台でシンプルに演出されたこの公演は、ジンがどういうメンバーなのか象徴的に表している。ジンは、BTSの音楽的アイデンティティーをキーワードとして並べた時、真っ先に思い浮かぶメンバーではもちろんない。彼はヒップホップアイドルと呼ばれたBTSを代表するラッパーではないし、華麗な舞台で有名なBTSのメインダンサーでもない。にも関わらず、BTSのキャリアを注意深く見守ったなら、彼らの音楽にとってジンの存在は決して過小評価されてはならないという事実を知ることになる。

 

彼はメインボーカルではないが、いつも最も着々と安定的なステージを見せてきたボーカリストであり、しばしば曲の一番難しい高音域を担当してうまくこなしている。しかし特に目立った声色を持つボーカルメンバーたちの中で、ジンの声の役割は単に機能的なものというより、多様な心情と深い説得力を作り出し、音楽的な幅を広げる役割に近い。アーバンやヒップホップに根を持つBTSが、彼らのイメージと一見あまりつながらない「Moon」のようなロックなアップテンポの曲や、ロックサウンドとR&Bのミックスである「Awake」と言った曲をじっくりと試しながら自然に溶かし込むことができる理由も、ほかでもないジンのボーカルのおかげだ。

ミックス、地声、ファルセットなどをうまく駆使しながら、それが教科書的な典型的な発声に聞こえないのもジンのボーカルの特徴だが、際立つ美声の声色をそのまま保ちながらも、高音部で濃い訴求力を引き出すところはまさに独特な魅力だ。ジンの声は豊かなメロディーを最も情緒的、安定的、または歌謡的に消化できる点で、最もドラマチックな瞬間のキリングポイントや重要なリフレインを作ることができるという信頼感がある。「Love Yourself」シリーズの巨大な物語、「Fake Love」の、痛みが最終的に自己愛への理解に迫る切々とした気付きの瞬間、ジンの説得力のある「銀色の声」は「Epiphany」で凄絶なリフレインを出し切ってその終章を美しく終わらせる。忘れられない瞬間である。

 

JーHope

 たった一人の存在によってBTSには絶妙なバランスが保たれる。前面に刻まれはしないが、BTSという世界の重要な一部を、音楽的にも、人間的にもしっかりと支えているメンバー。JーhopeはBTSのキャリアのなかで最も大きな驚きを与えてくれたアーティストだ。ダンス、ラップ、作曲、プロデュース能力まで兼備した多彩な音楽的才能。しかし彼の魅力は歌詞の単語一つやメロディーの一節のような個別の要素で評価できない、ある種のエネルギーにより近い。私はそれを、無害な肯定の力と呼びたい。彼のラップ、ボーカル、ダンスは、BTSの宇宙を航海する人々を、最も明るいところに導く。彼の洞察は常に楽観性とポジティブさを映していて、彼のメッセージと動きを理解するために高度な知識や感情の消耗は必要ないまま、全ての音楽的な意図を納得させる。

 

「八道江山」で見られるようにJ−hopeはシュガと共に最も地域性を一番率直に表す、飾り気のないメンバーであるだけでなく、それを音楽的に表現できるセンスを同時に持っている。J−hopeの初ミックステープである「Hope World」は、彼が自身の色をそのまま発揮する時、どんなアーティストになれるかを見せてくれた重要なきっかけとなった。もちろんダンスを外して彼の芸術性を全て理解はできないだろう。「Chicken Noodle Soup」は光州のストリートで飛び回っていた一人のダンサーが、ついにそのルーツと言えるハーレムのダンスを研究しつつ国境を飛び越えてトランス−ローカルの相互関係を完成させる意味のある曲だ。J−hopeというアーティスト、あるいはチョン・ホソクという一人の人間が持ったポジティブさと愉快な人格、ダンスに対する情熱が画面をいっぱいに満たしている。「Ego」は愉快でいたずら心溢れるが、決して慎重さを失わない彼の人生の姿勢が、音楽の一曲にぎっしり表された傑作だ。BTSの連作「Map of the Soul:7」の旅路、その肯定的な悟りの最後の自己発見の瞬間を、希望に満ちたメッセージとして伝える必要があるなら、J−hopeよりも適切な人がいるだろうか。

 

Jimin

 ジミンの声、そして彼のパフォーマンスを見ながら驚くのは、一見相反する二つの魅力が、一人のアーティストの中に完璧に共存しているからだ。ダンサーとして、彼は柔軟性と節度を絶妙な比率で持っており、その動きには優雅な中にも濾過されていない魅力が同時に発見される。ジミンは傷つきやすい子供の心と、深いところにある大人の自信を共に持った人のようで、彼の歌とダンスは限りなく儚げに見えながらも決して壊れない内面の芯のようなものを見せてくれる。まるでかつてマイケル・ジャクソンがそうだったように。

 

一人のパフォーマーとして、一人のアーティストとして、彼は誰もが欲する才能や独特な魅力を持っていることは間違いない。BTSを一つの声だとみなした時、ジミンの声はその地模様と印象を作る最も重要な聴覚的な要素のうちの一つだ。どんなに声を区別できない人でも、多くの声が流れる中でジミンのものだけは容易く探し出せるだろう。BTSのボーカルラインを構成するにあたり、ジミンは難しい高音域を主に消化する。「Magic Shop」の「君を慰めるmagic shop」というところでジミンの湧き上がる声は、どんな厚い壁でも貫き登ることが出来るほどの痛快な高揚感を持っている。

しかし彼の声は、張り上げる高音より、むしろ巧みにグルーブに乗る弾力的なリズム感にしばしばより大きな魅力が現れる。「Boy with luv」や「Make It Right」は、典型的でないバイブスで曲の持ち味を最大化するジミンの才能がよくわかる曲たちだ。ジミンの特別な魅力は、聞く人たちの心を武装解除させ、彼の最も柔らかく儚い部分へ引き入れる点だ。「Serendipity」は歌詞、音楽、そしてパフォーマンス全てでジミンが持つ叙情性のエッセンスだけをエンコードしたような曲だ。特別な舞台照明なしでも、まるで総天然色の光が降り注ぐようなステージ、そして優雅なボーカルまで。「Serendipity」のパフォーマンスは見る人の息を止まらせ、ステージの最後には惜しむ気持ちでため息をつかせるのだ。

 

V

 早くこのもどかしい季節の終わりを経て大きなスタジアムで数多くの人々と「Inner Child」を聴けるようになって欲しい。その時まではこの走り抜ける青春の讃歌、過去の自分に向けた美しい告白をヘッドホンで聞いて満足するしかない。特定の声で記憶されないのがBTSの魅力だが、にも関わらずVの声にはとても特別な何かがある。彼の格別な声色とトーンは、それ自体がBTSの重要な音楽的なアイデンティティーを占めている。同じ男声の中でも羨まれるパステルトーンのきれいな中低音。低く敷かれながらもしつこく響かず、十分なボリュームと質感を持ちながら、依然としてさらっとした清涼感、何よりも簡単に真似のできないVだけのソウルフルな感覚。このように、説明するには堅苦し多くの単語を評論家に求めるが、その声色の正体を確かめるには、たった数秒だけで十分だ。「Singularity」はどこにもない誘惑的で官能的、しかし決して通俗的ではないネオソウルの曲で、Vというボーカリストに対し全く新しい関心を呼び起こした曲だった。BTSアイデンティティーそのものである「Epilogue:Young Forever」の有り余る叫びと「Save Me」中の彼の切実な声はBTSキャリアの最も重要な瞬間ごとに間違いなく輝いた。

 

彼の低く分厚いけれどなお清楚なトーンは、「DNA」でのように音楽的物語で信頼感を与え続け、聞く人の耳を傾けさせる重要な要素にもなる。メンバーが各々のパートだけを消化しなければならないグループ音楽の限界を考えた時、BTSの音楽だけでは、Vの魅力を深く知るのが難しいのは事実だ。そこで私はひときわ冬の感じが込もった彼のソロ曲をよく探してみる。「風景」や「Winter Bear」を聞けば、このボーカリストの魅力が、単に声色や低音にだけあるのではなく、普段は表にあまり出さない感情と感性そのものにあるということをすぐに理解できるだろう。まるで、声が映画のサウンドトラックの演奏のように働き、ただ淡々と曲の感情線を伝えることに力を注いでいることがわかる。彼の性格のように。

 

Jungkook

「My time」を聞いてJKのソロアルバムを聞く日がそう遠くはないことを感じることができた。「Map of the Soul:7」の最も印象的な曲に選びたいこの曲は、すでにBTSの曲と数多くのカバー曲で見せてくれたJKのボーカル能力についての私の判断を再確認させてくれたのはもちろん、BTSのメインボーカルとしてだけでなく、将来ソロ歌手、特にKPOPシーンのコンテンポラリーポップ/R&Bシンガーとしての彼の未来を想像させるに充分な作品だったからだ。

 

JKのボーカルを表現できるいくつかの単語を浮かべることができる。淡白、ドライ、流麗、モダン‥現代のポップボーカリストたちに必要な技術的あるいは感性的な要素たちを全て持つにも関わらず、彼のボーカルからは、テクニックの誇示というニュアンスをほぼ探すことができない。これは連続した高音とシャウトのような技巧自慢をメインボーカリストのイメージとして持っている人たちには、はっきりと独特なものとして、あるいは慣れない感じを与えるかもしれない。JKはメロディのフレージングを処理するのにとても迅速で簡潔であるだけでなく、あらゆる旧態依然としたテクニック、あるいはクリシェと感じるような癖を持っていない。このように簡潔で淡白なボーカルの傾向とテクニックの調和は、JKをどのKPOPアイドルとも違う、同時に既製のR&B歌手たちとも違うミュージシャンにする。若く流麗でありながらも現代的なボーカルが持つ絶妙な均衡美。また彼は音楽に感情を込めるのに決して躊躇しないが、その感情は常に一定の線を超えないよう本能的にコントロールされているという印象を与える場合が多い。これは少々感情を過剰に出さない彼の性格から来ているもののようでもあり、音楽に求められる最小限の感情だけで歌詞の内容を十分描くことができる才能に起因するものであるようにも思える。「Euphoria」は彼の節制されながらも洗練されたボーカルの真髄を見せてくれる代表曲だ。爽やかななシンセ編曲の中で、少年の声を持ったJKは、恋する直前に感じる言葉にできないたくさんのときめきと憧れの気持ちを、どんな大げさな装飾なく完璧に描く。彼の声だけで作られた新しい作品を待つ理由だ。