はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

BIGISSUE Korea SUGA編の後記/日本語訳

isakchoi.postype.com


こちらのチェ・イサクさんのコラム後記の訳です。

元コラムの訳はこちら。

honeysoju7.hatenablog.com

 

【後記】BTS SUGAは大声で話さない

01.私の最推しはSUGAではありません。

このコラムは去年9月から始めました。 本格的に書いたわけではなく、9月にジョングクを書きながら、言いたいことは確かにあるのに、何を書けばいいのかわからず大変だったので、何かが思い浮かぶたびに時々メモしました。 

長い時間ををかけて考えながら書いたもので、個人的に久しぶりに後悔なく書けたので気に入っていますが、ビッグイシューコリア編集部で初めてBTSファンでない人たちも雑誌を読まれて、今回のコラムは少し客観性に欠けると言われました:)       

 

例えば、このような文章です。 

 

全てに対して冷淡な印象を与えるが、彼の明るい笑顔は、水道管が凍結・破裂して大家との長い通話を終えた暗澹たる冬の夜にも、心を石村湖の桜並木に変える。

SUGAが天性のアイドルである理由は、マイクを握るだけで人の心を燃え上がらせるからだ。   

なので、コラムと二次創作の差が何なのか、読者を想定して書くべきなのか、とするとプラットフォームはどこが適切なのか個人的に悩みました。 この後記も、掲載が延びた理由はさまざまな事情がありますが、あまりにもオタク心のために、少し書いては離れて考えて、消すことを繰り返したからです。      

 

コラムが出るたびに、『このメンバーが一推しじゃないか』という声を聞くのは光栄でしたが、特に今回の文章は、確信に満ちた『ユンギ推し』という言葉を本当によく耳にしました。 結論から言うと私がもう1g愛する最推しのメンバーは他のメンバーです。 あえて最愛ではないことを明らかにする理由は、後記を読んでみると… 分かるんじゃないかと思います。

 

では走ってみます:) 

分量に注意してください! 合計で9200文字(空白を含む)ほどです。(´;ω;`)

 

02.ミンパダプ*1の理由を見つけられなかった理由

元々は、先に申し上げた通りに「ミンパダプ」の理由をずるずる書こうとしました。 ミンパダプの理由を探すのが、 誰かがやらないといけないミッションだと 思っていた気がします。 最初は理由が見つかると自信を持って、最初の文章を「BTS SUGA、本名はミン・ユンギ。 毒薬のような魅力と希少薬のような魅力を同時に持ったミステリーな男」と書き始めました。 ところが文章がうまく続きませんでした。 ブレイン・ストーミングだと思って、一人で笑いながら、変な内容だけを5枚書いては書き換えました。

 

公式に発行される紙面に書くには不適切ですが、私なりに想像して描いてみたミンパダプの理由を、気楽に整理してみます。 

     

SUGAは、大邱と狎鴎亭という文化・経済・政治的条件が相反する地域で成長しました。 経済的自立を10代で果たし「食べて生きる」ことの大変さを早く悟ったと同時に、経済的自立は自由を意味しますから、自分の人生を自分で決められるという手応えを感じて育ったのでしょう。 そして、年齢主義の強い韓国で、未成年者の時に社会生活を始め、多くの差別と不当な目にあったでしょう。 もちろん未成年者ですから、代償のない親切と施しもたくさん受けたのでしょう。      

 

そのように半分大人になった状態で、芸能界の序列で最も低い位置の「中小企画会社、地方出身、練習生」になりました。 両親のもとを離れてソウルに来たため、練習生生活を始めた瞬間から保護者にならなければならなかったはずです。 

そして社会生活を早く始めたので、自分を取り巻く状況を同年代より冷静に把握できたと思います。 彼らを保護するために警戒し、判断しなければならないことも多かったと思います。 なので練習生生活という、夢に向かって全身を投げ出すロマンチックな時代を、夢のために耐え忍ぶ時間として 受け入れたんじゃないかと思いました。      

 

そんな環境の中で鍛えられながら成長し、苦労してデビューし、血と汗の涙で成功を収め、ワールド大スーパースターのBTSに至りながら、誰よりも多様な立場と観点で社会と人を経験したと思います。

だから、彼の世界は広いのです。 型にうまくはまらないので、どんな人だと説明するのが難しいです。 ここに加えて、新しいものへの追求と幅広い興味で自分をアップデートし続けるために、更に説明しづらくなるみたいです。 

しかし、彼にあいまいさはありません。正確に説明して真摯に気持ちを伝えます。 この真摯さが、 ファンになる入口だと思います。

 数多くの謎の中で、じわじわと目を合わせてくる一瞬の温もりが、彼を見つめ続けさせます。   

   

永遠に合わせられないキューブブロックのように、新しい魅力の組みあわせが作り続けられていくので、SUGAには無職のおじさんも似合うし、ワーカホリックな大企業のチーム長も似合うし、農家の後継者も似合う人に感じられるのではないでしょうか。 だからミン・ユンギにはまったら 答えがないと。 私はこうしか片付けられないと思います。

 

03.SUGAは大きな声で話さない。 そうする必要がないからだ。

 ミンパダプから方向を変えながら新しい最初の文章を見つけなければなりませんでした。 「BTSのラッパー・SUGAは、大声で話さない。その必要がないからだ。彼には本能的に人を集中させる力がある」はメモしていた内容の一つですが、前に移し、内容も「ファンとしてミン・ユンギにはまると答えのない理由」から広げ、「分からないから知りたい人」に変えました。      

 

実はここにもっと言いたいことがあります。 SUGAはバラエティーではよく喋りますが、普通は話を聞く側ですよね。それも、とても誠実に聞きます。 内容が長すぎたり、横にそれたりすると、整理する役割をします。 SUGAは話を聞くことで、対話に積極的に参加する人だと思いました。

 

04.SUGAは変だ。 本当に変だ。     

SUGAは変です。 "変だ"という言葉が否定的に聞こえるかもしれないので、"特異だ"、"特別だ"に変えようかと思ったんですが、SUGAは… 「変だ」で合っているようです。     

 

私が一番変だと思ったのは、自我が肥大化していない点でした。 3つの名前で音楽を発表するほど創作意欲が高く、発表した音楽すべてが成功しました。 創作欲、 表現欲、 承認欲、証明欲は普通結びつくと考えて来たので、こんな場合なら普通はものすごい自己陶酔に陥るはずなのに、SUGAは淡泊で物静かです。

 

J-HOPEレビューを書くときに少し言及しましたが、私は社会生活を国会から始めました。 大成功した人々、権力を持った人々がどのように壊れているのかたくさん見たと思います。 そのため、「権力とは何か?」を常に疑問に思い、答えを探すために多くの人に質問して生きてきました。 ある日、青瓦台(チョンワデ、大統領府)で長く働いたある方が、「権力は麻薬だ」という話を私にしてくれました。 まるで麻薬を打ったように、眠くもならずお腹も空かず、自分の全能感に酔うという意味でした。      

 

しかしSUGAには毎日出勤して蟻のように働く人だけの疲れが見えます。 昼休みにソルロンタン屋さんに行けば、隅のテーブルでおいしくカクテキを噛んでいそうな感じですね。 毎日自分が責任を負わなければならない、自分の仕事をする人は生きるのがそんなに楽しくないんですよ。     

 

権力は人の「バランス感」を壊すと思います。 誰も自分に間違ったと言わなくなると、正否を判断できなくなります。 皆が上手だとさえ言えば自分自身を失ってしまいがちです。     

 

しかしBTSは、どこでも国賓として待遇を受け、着て使うものが全世界で品切れになり、ハッシュタグ一つをつけただけでも数千のニュースが溢れ出るのに、バランスを取って毎日を誠実に過ごしているように見えます。 それがすごく不思議でありがたいです。      

 

BTSに間違っていると言える人はBTSしかいないので、お互いがお互いにこれからもっと重要な人になっていくと思います。 彼らのチームワークは今後も強固になり、特別になっていくのではないかと思います。

 

 

2つ目に変なのは、彼がアイドルに本気だということです。  

 

「就職詐欺」に遭ってデビューしたため、「僕はアイドルになる人じゃないのに」と考えるかもしれないのに、SUGAは、一生BTSをするだろうと言います。 彼がいかにBTSに本気なのかは、ミンストラダムスというあだ名が説明してくれると思いますよ。 未来を見通す霊験あらたかな感覚ではなく、BTSに対する強い信頼と自負心が彼をミンストラダムスにしたと思います。      

 

加えて、この社会は女性ファンを、特にアイドルが好きな女性ファンを程度が低いとこき下ろしてきましたが、SUGAは「私たち」を「すごい人たち」とずっと言ってくれます。 ありがたさではなく、尊敬の気持ちを込めて表現します。 もちろん、他のメンバーも同じです。      

 

PTD LAコンサートでファンたちが防疫規則を徹底的に守ってきたことについて、直接その場に行ってきた私でさえ単純に義務だと思っていたのですが、SUGAはV LIVEで、まるでそのコメントを準備していたかのようにきちんと取り上げて、歴史的な現場だったと言ってくれました。  

 

そして、神戸のコンサートが中止になったとき、ファンたちに"失望"を与えたのではなく"傷"を与えたと言いました。 ファンの心に彼がどれほど大きな責任を感じているかが分かる部分だと思います。 

 

K-POPファンはとても素敵ですごいことをしてきました。 K-POPが世界的に人気を集めている決定的な理由は、韓国の'オタ活文化'が一緒に広まったからだと思います。 ARMYファンダムの中で、私はとても多くのことを学んでいます。 「善い影響力」という言葉では表現しきれない知性とビジョン、そして人生の生き方を学んでいるのです。

評論家でも専門家でもない私が、'K-POPコラムニスト'と自ら称する勇気を出せる理由は、ARMYファンダムが誇らしいからだと言いたいです。 もっと多くのファンが、 K-POPの話をしてくれたらと思います。      

 

 

3番目に変なのは、SUGAが「男らしさ」に執着しないことです。      

「男性性が特定の感情や特性によって定義される文化などがあります。 私はそのように表現されることが好きではありません。 男らしいとはどういう意味ですか?」 

SUGAは、男子を優遇する思想が強い韓国の中でも保守的な地域とされる大邱生まれで、マッチョな男性性がリードするヒップホップ文化の中で成長し、男性メンバーと働いてきたにも関わらず、男性と女性を分けて対象化しません。    

 

だから「居心地の悪い」瞬間がないのだと思います。 BTSのメンバーたち、みんな同じです。 "居心地が悪くないこと"は、世界的に性認知について敏感になっているいまの時代に、BTSの大きな資源であり、彼らが先進的であり続ける原動力のひとつだと思います。      

 

現在、ハイブの取締役会の7名全員が男性なのが、必ず是正されるべき問題だと考える理由でもあります。

 

05.「私のアイドル」は40歳になり60歳になってもファンにとってはかわいい猫、ウサギ、子犬、ひよこだが、彼は本当に猫のようだ。 呼んでも来ない猫のように生やさしくない人だが、私をぐっとさせる温もりのある存在だ。 

この段落をとても気に入ってくださいました。 どのように書いたのかというと、私が去年の夏にソウルの繁華街のどこかに行く途中で、他のジャンル歌手の誕生日カフェを通りすぎたことがあります。 かなり年配の方でしたが、猫の耳を描いたバナーがカフェの前に立てられていました。 それを見て、自分の歌手は、年を取ってもファンにはかわいい猫になるんだなと思いました。      

 

SUGAが猫にどれだけ似ていたのか、最初は外見についてたくさん書きました。 そうしてるうちに全部消しました。 猫顔は多いですが、SUGAが猫のような理由は外見だけではないですからね。 私はペットを飼ったことがないので、何と書けばいいか悩んだ末に、赤ちゃんの甥っ子を抱っこした時を思い出しました。 ほやほやと小さな存在を抱いた時のぐっと来る感じ。 猫を抱っこしたら、 こういう気分じゃないかと思います。 そうやって完成した文章です。           

 

06.SUGAは対人恐怖症とうつ病で精神科の相談を受けた過去を後にして、「誰かの役に立ちたい」と心理相談の勉強を始めた。 

毎回コラムを書くたびにそのメンバーが作曲したり、決定的に参加した歌をずっと聞きます。 音源サイトとサウンドクラウドにそれぞれのプレイリストを作って聞くんです。 聞いていると必ず何かが思い浮かびます。 その中でももっとよく聞く歌があるんですが、JINは「Epiphany」、RMは「Bicycle」、ジョングクは「My Time」、J-HOPEは「Trivia起: Just Dance」、SUGAはミックステープ1stアルバム『Agust D』の「The Last」でした。     

 

正直に言うと、私は文章を書く前に「The Last」を2016年8月の『Agust D』発売当時1回しか聞いていませんでした。 理由は、何と言うか、 心が苦しかったんです。     

 

当時は私がファンになったばかりでSUGAをよく知らなかったので、「The Last」をSUGAという人のすべてだと思っていたようです。 それで衝撃的で辛かったです。 今回、挑戦する気持ちで 「The Last」を聞いたんですが、 音楽として聞くことができました。 今は「The Last」に込められたアイデンティティーがミン・ユンギの音楽を貫いてきた一つの文法として定着し、ファンとして数年間SUGAを見てきて、「The Last」の中の話が、彼の人生の一部だということを知っているので、音楽として距離を置いて聞けるようになったと思います。      

 

「The Last」を繰り返し聞いてSUGAが心理相談の勉強をしていることが新しく浮かんで来ました。 コロナのせいで家にいる時間が延びて、元々新しいことを試みる彼なので、今回は心理学を勉強するんだなと、それほど大したことではないと思っていましたが、心理相談を受けた人が誰かの助けになりたくて勉強しているという事実が、彼の人生でとても重要な物語だと思うようになりました。    

 

BTSが成功の成功を繰り返し、音楽に希望と愛のメッセージが込められていくにつれ、ミン・ユンギの中の傷や痛みも連動して終わったと、当然のように思われてきましたが、誰もがそうであるように、SUGAが自分だけの熾烈な戦いを続けてきたことに気づきました。 戦いは今も続いているでしょう。 この世の誰もがそうであるように。

 

07. だから彼はBTSのSUGA、Agust D、プロデューサー「By SUGA」の3つの名前で音楽を発表する。 クレジットや形式の違いにすぎず、すべてミン・ユンギの音楽だ。

最近SUGAについて専門家から良いコラムが出ています。 『D-2』を中心に、BTSのSUGA、 Agust D、プロデューサー'By SUGA'を区分するアイデンティティ、完璧主義と天才性に対する賛辞が込められていたのですが、その方々の視点に反論するのではなく、私は3つの主体がよく区別できないんです。 完璧というよりは、他のことを目指していると思います。

 

『D-2』でミン・ユンギは完璧を目指していません。 彼が完璧を志向した音楽は、あまりにも精巧で確実に表れると思います。   

 

今回 Stay Aliveを聞きながらも感じたんですが、現在プロデューサーSUGAの音楽で一番目立つ部分はテクニックと構成だと思います。 非常に幼い時に作曲を始めたにもかかわらず、依然として音楽作ることを楽しんでいるため、多作してあれこれ試し、補完しながら非常に精巧な音楽を作ります。 どのように構成すればいいのか、緩急を調節できるベテランです。      

 

『D-2』に盛り込まれたのは、ミン・ユンギの好奇心と無邪気さだと思います。 たくさんのチャレンジをしています。 D-2は作りたいものを作って、だから無骨で一貫性がないようにも感じられるんです。 「大炊打」、「What Do You Think?」、「Strange」、「Burn it」、「People」など収録曲の色が 全然違います。 そしてわざと「罠」を置いて収録曲を縛る一つの規則を無くし、不注意な評論を拒絶します。      

 

「音楽に罠を仕掛けるんです。 ゴキブリが出たら、罠みたいなものを置くじゃないですか。 間違いなく来て死ぬんです。 『What Do You Think?』と『大炊打』は罠です」-2020.5.28.V LIVE中     

 

D-2には、「ああだこうだ言わず、自分の音楽を聴け」という自信と、緩急を完璧にコントロールする創作者としての熟さが感じられます。

こう言うのも私が「罠」にかかったせいかもしれませんが!

 

08. 休まず駆け抜けキラキラと激しかった彼の20代に、お疲れ様と言いたい。 そして祈りたい。あなたの明日に平凡な幸せがたくさんあることを。うずくまりたい日に、誰かに愛されているという事実が君を立ち直らせるように。立ち上がらなくても、大丈夫でありますように。 そして今夜、安らかに眠れますように。

 

この文章を、 一番気に入ってくださったようです。 実はこれはSUGAに言いたいことではありませんでした。 BTSについて思い浮かぶ考えをメモしたものの中の一つでした。 もしかすると、私はBTSという最も大きな慰めを受けている存在たちに、聞きたい言葉だったのかも知れません。      

 

原稿を書きながら自然にこの文章をSUGAコラムに持って来ました。 そしてSUGAに合わせて、「20代にご苦労さまと言いたい」、「普通の幸せがもっとたくさんありますように」などのフレーズを加えて修正しました。


09. 最後に、くだらない言葉

SUGA後記が特に長いですよね? 私がこれから後記をどのように書くべきか見当がついたこともあるし、今週、会社に仕事が多くないからです! ちなみに私の本業は芸能界とは何の関係もありませんし、記者でもありません。 BTSK-POPについて書くのはただ好きでやっていることです。      

 

2020年、BTSビルボードのシングルチャートで1位を占め、成功要因を分析する記事が多く掲載されました。 ところが、BTSがいわゆる「大手芸能事務所」出身ではなく、これまで彼らを注意深く観察し記録してきた専門家が多くなかったため、共感できる文がほとんどありませんでした。 例えば、「善い影響力」をテーマにした文は全て寄付についてのものでした。 それで、ファンである私がもう一度正確に書いてみようという気持ちで、BTSについての文を書き始めました。 こんな風に書き始め、引き続き書いていきたいと思います。 本もぜひ出したいです。      

 

来月にはVについて書く予定です。 「確かにVが最推し」という言葉を 聞けるように一生懸命頑張ります。  

 

長文を読んでいただいて本当にありがとうございます。

皆さん今夜楽に眠れますように!



*1:「ミン・ユンギ(SUGAの本名)にはまると答えがない(お手上げだ)」민윤기에 빠지면 답이없다.