こちらのハイライト動画から。
★映画「別れる決心」やドラマ「シスターズ」のネタバレがあるので注意★
シナリオの中の愛する人物とその欠点
チョン・ソギョンさんへの質問。自分が作り出したキャラの中で、最も愛する人物は?
答えは「そのときそのときの最新作のキャラ」。
ソギョン:今年の初めは「別れる決心」のソレで、中盤は「シスターズ」のインジュだったんです。(演じた)キム・ゴウンがあまりに愛しくてあまりに褒めまくっていたらある人が「あなたが生んだの?」と。彼女が可愛いと言われるのが嬉しくて、悪口は我慢できなかったです。
RMからソギョンさんに「どういう面でそういうキャラクターを愛するんでしょう」と質問。
ソギョン:私はキャラクターをつくるときに、その欠点をまず考えるんです。私たちが誰かを愛するとき、その長所があるから愛するんじゃないと思うんです。あるキャラクターの持つ欠点を、私たちが受け入れられるときに、愛するんじゃないかと。
だからこのキャラクターの欠点は何だろう。そしてその欠点がどう物語と結びついていくだろうか、と考えます。
それぞれのキャラの欠点は…
シスターズのインジュ:少し欲張り
インギョン:無謀
イネ:自分のことばかり
だそう。
ソギョン:欠点がないキャラクターが登場するドラマもありますよね。とても…力のある弁護士とか。いわゆるサイダー(スッキリした感じ)をくれるプロットがありますが…
ヨンハ:それは「ヴィンチェンツォ」のことですか?
ソギョン:……あははは……そういう無敵なキャラクターが出てくる場合もありますね。外部の敵に勝っていく話もありますけれど、私が書く話では(登場人物たちの)選択が物語をつなげていくんです。
いきなりのヴィンチェンツォww
選択はその人物の「欠点/欠陥」から出てくるというソギョンさん。
サンウクさんは「私がファインマンを好きなのも、通常は欠点と思える点が魅力的だから。だから、まず欠点を考えるというのは、その人物の魅力を考えるということなのかも」と。
ソギョン:そういう欠点から、視聴者や読者は実は自分の姿を見ているんです。そういう欠点があっても、このキャラクターは成長できたし、成功できたというところから希望を見いだすものなので、受け入れられる良い欠点を探すことが、キャラクターをつくるのに重要になるんです。
選択がつくる物語と悲劇
作家のヨンハさんが、ソギョンさんの話を受けて、昔からつくられてきた物語の作り方について話が繫がります。
ヨンハ:古代ギリシャの悲劇では、「性格が運命となる」と言いますが、ここでの性格は欠点/欠陥のことなんですよね。その欠点が運命になっていく。
女を明かすだとか、傲慢だとか。最初は問題にならないんだけど、色んな選択をするうちに、それによって滅びることになる。
アリストテレスが悲劇と喜劇を簡単に分けましたが、喜劇となるのは観客たちよりダメな登場人物が出てくる話。心置きなく笑える相手。悲劇は自分たちよりも高尚だと考える、貴族や王や英雄たちの話。そういう英雄たちでさえも欠点で滅びるということ。そこにカタルシスもある。
人物のディティールをどうつくる
映画監督であるMCのハンジュンさんと脚本家のソギョンさんとで「登場人物のディティールをどうつくるか」についてのお話。
作家、演出、監督、そして役者で作っていくもので、時には勝手に進化していくものだと。
ハンジュン:そのキャラクターのビジュアルが良く分からないとき、「靴から考えてみて」とアドバイスされたことがあります。
ソギョン:シスターズのインジュの歩き方がすごく気に入りました。「堂々としてようと頑張っている歩き方」なんです。そんなことはシナリオには書いてない。俳優が苦労してキャラクターに接近したんです。
RM:でも作家としては、頭の中の姿と違ったら残念だったりしませんんか?
ソギョン:いいえ。実はインギョン(シスターズの次女)も、私が書いたものとはずいぶん違ったんです。私は冷たくて乾いた人物として書いたんですが、実際にドラマを見たら、すごく情熱的で熱いキャラクター。
それで、「これ、大丈夫かな?」と思ったんですが、だんだんとドラマの中で真実に近づくにつれて冷静にクールになっていく。それは役者と監督による人物の解釈なんですよね。そうやって登場人物との対話を通じて、そのキャラクターを理解する力がついていくようなんです。
ハンジュン:あるときから作家の手を離れて生き物みたいに進化していくんですよね。監督にもどう進化するのか分からない。視聴者の心でも変化していく。
映画「別れる決心」は自然のように進化した
RMが「一番愛されたキャラクターは?」の質問にソギョンさんは「別れる決心」のソレだと。そのソレの欠点/欠陥は「別れられないこと」だと言います。
★ネタバレ★(反転で読めます↓)
ソギョン:中国にいたとき、愛する母が死ぬのを(母の望みで)助けた。その遺骨を持って韓国に来たとき、その痛みをかかえているので、たったひとつの「別れ」にも耐えられなかったんじゃないかと。
ソンウク:面白かったのがタイトルが「別れる決心」。男女の間で「別れる決心」はできても、「出会う決心」はできない。ヨンハさんが以前読んでと言われて読んだ、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」。そこで、人は常に「偶然」の出会いを求めるとあった。そうじゃないと「運命」だと思えない。
物理学で言うと、ランダム・プロセス。そういう運命を求めるんだけど、「偶然」は時間が経つと「必然」になる。その偶然を必然にする過程こそ「愛」なのではないのかと。そしてこれは自然と同じなんですよね。
ソギョン:「別れる決心」はその意味でぴったりだと思います。映画を見ながら、自分た書いた映画のなかで最も自然に近いと感じました。
意図した台詞を越える演技がたくさんあり、その場所が与えるニュアンスからシーンが変わることも多かったです。私が書いたはずなのに、「本当に私が書いたの?」と。結末を知っているのに、結末に衝撃を受けたんです。
映画が持つ偶然性、についてこの映画の大ファンであるRMが熱く語ります。
RM:この映画に結論がなくて、僕に何かを強いる感じがないのがとても好きなんです。映画に込められたメタファーが僕にすごく迫ってきたし、強いられないその感じと、僕自身を投影できる、その余白がとても好きなんです。
僕がヘジュンなら?ソレなら?と考えながら、結論は自分なりに出せば良いんだと思えて。
ハンジュン:わあ、こんなに暴走するナムジュンさんを初めて見たよ~
成功したオタク、RM大満足の回でした。