はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

防弾少年団 SUGA&ラップモンスターの「良いものは良い」/2015年インタビュー日本語訳

見かけて保存していた2015年の記事が興味深かったので訳します。2015年のラップモンスター(当時)とSUGAへのインタビューで、韓国のヒップホップに関する連載のなかの一つです。当時韓国の音楽業界(ヒップホップ周り)から、BTSがどう見られていたか、当時の二人の葛藤などについて語られています。

 

元記事はこちら。

sports.donga.com

ヒップホップに出会う⑨ 防弾少年団 SUGA&ラップモンスターの「良いものは良い」

2015-07-06

現在の歌謡界でヒップホップは例のない全盛期を享受している。 「SHOW ME THE MONEY」「アンプリティラップスター」等が放送される日にはポータルサイトの検索語をヒップホップ歌手たちが総なめし、各種音源チャート上位圏にもヒップホップ歌手たちの名前が欠かせない。 自然にヒップホップを指向する音楽家が多くなっており、単純な規模拡大を越えて質的にも飛躍的な発展を成し遂げた。 「韓国ヒップホップルネッサンス」とも言える今、これをリードしているアンダーとオーバーの様々なミュージシャンに「ヒップホップに出会う」コーナーを通じて会ってみよう

「正直、インタビューをしに来るのが怖かった」

どんな理由で「怖い」と言ったのかは分かっていた。 だが、現在歌謡界で最も実力のある「ヒップホップアイドル」に挙げられる防弾少年団のラップモンスターの口からこのような言葉が出ると、ただアイドルだという理由で評価を下げられてしまう昨今の状況は少し残念ではある。

もちろん、過去には音楽的に完成されていない状態でデビューをしたり、インスタント食品のように作った中途半端な音楽で活動するアイドルもたびたびいたが、アイドル市場が20年余りにわたって歌謡界の主流に位置づけられながら、彼らの音楽は相当なレベルアップを成し遂げた。

また、いくつかのジャンルでは才能のある青年たちが登場し、明確な音楽性と成果を残したグループも存在する。

しかし多くの人々の頭の中には依然として「でも所詮はアイドル」という認識が相当部分残っており、「防弾少年団のヒップホップ」はアイドルであるために向き合わなければならなかった偏見との戦いの連続といえる。
大衆の認識が以後どのように変わっていくかは防弾少年団を含め、このような才能のあるアイドルの活躍の可否にかかっているだろうが、一つ明らかなことは「アイドルかどうか」は決して「ヒップホップかどうか」を区分する基準ではないということだ。 そして、 防弾少年団が素敵な「アイドル」であると同時に「ヒップホップグループ」だということも否定できない事実だ。

(今回のインタビューはSUGAとラップモンスター2人のメンバーとのみと行われた)

良いものは良いということ

アルバムプロモーションとは関係なく行われたインタビューだったが、偶然にも防弾少年団のミニアルバム「花様年華pt.1」の後続曲「DOPE」の活動直前に日付が決まり、自然にアルバムについて話が始まった。

「DOPE」の後の活動についてラップモンスターは「(後続曲だが)きちんと見せようと『I Need You』とタームを長くした」とし「後続曲を別に準備したのではなくアルバム収録曲の中で一つを決めたものなので、うまくやりたかった。 ジャケットも新しく撮って ミュージックビデオも撮って、振り付けも新しく作って…完全に新しくもう一度出たかのように準備した」と説明した。

続いてSUGAは「プレッシャーはないが、元々準備をたくさんする方だ」として「(『DOPE』は)前作『DARK & WILD』で『ホルモン戦争』で後の活動をしたのと似た感じだ。 あの時、それの反応が良くて僕たちが生き延びた」と冗談を言って笑いを誘った。

もう一つ「花様年華pt.1」は既存の防弾少年団のアルバムと決定的に異なる点が存在するが、それはすべてのアルバムにコツコツと収録されてきた「Cypher (ラッパーがフリースタイルラップで自分の話をすること)」トラックがないということだ。

ラップモンスターは「Cypher のトラックを期待する方々もいるが、続けているうちにインパクトが落ちたので、今回はあえて休んだ」として「今回のアルバムは8ヶ月ぶりに出たけれど、その前には4ヶ月、6ヶ月で出るほどアルバム周期が短い。 またCypherが収録されると、あまりにも似てくるのではないかと思い、時間が経った後にもっと良いものを見せようと考えて休んだ」と説明した。

残念ながら「花様年華pt.1」には収録されなかったが、Cypherはヒップホップミュージシャンとして防弾少年団アイデンティティを最も明確に示すトラックで(実際「BTS Cypher PT.3:KILLER」については、ヒップホップ一筋を歩んできたMCメタが褒めたりもした)、メンバーたちが直接曲と歌詞を書く防弾少年団であるからこそ可能なトラックといえる。

ラップモンスターは「(メンバーたちのアルバム参加比重は)半分以上だろうか。 約60%くらい? アルバムが出る度に比重がますます増えている」として「どうしても僕とSUGAヒョン、そしてJ-hopeまでラッパーライン3人でほとんど引き受けていたが、前回のアルバムからは残りのメンバーも制作に参加してトラックを作った。 僕たちがやっていることもたくさん見て、本人たちの欲があって今回のアルバムにもたくさん参加した」とアルバム制作の方法を説明した。

ここでもう一つ明らかにしておかなければならないのがメインプロデューサーであるバン・シヒョクの役割で、ラップモンスターは「ただ点検と方向を定めてくれるディレクターと言える。 全体的にアルバムのバランスを調整してくれる役割をする」として「『君たちがするのを見たい』として任せてくれる方だ」と話した。

続いてSUGAは「制作したら最終的な決定を下し、とにかく音楽の先輩だから判断を代わりにしてくれる」として「大衆歌謡の世界で僕たちよりはるかにスペクトラムが広いので、そういう支援をたくさん受ける。 収録曲は僕たちの思い通りにできることがあるとしても、タイトル曲はどうしても大衆性がなければならないから」と、作曲自体には大きく関与しないと明らかにした。

SUGAは「韓国ではプロデューサーといえば主に作曲家だと考えるけれど、実際には総括、監督といえる。 いつもそのような感じで作業をしている」とし、「実際にトラックを担当するプロデューサーはPdoggと言って別にいる。 そこに僕がサブで(プロデュースを)している」と付け加えた。

このように作られた防弾少年団の音楽で特記すべき点はヒップホップビートにかなりヘビーなギターリフを結合させた曲が多いということで、SUGAもやはり「そうです。僕たちのアルバムを聞けばエレクトロニックとギターサウンドがすごくたくさん入っている」と同意した。

ラップモンスターは「それが人を興奮させるのに中心的な役割をすると思う。 そのためセッションに気を使い、特にタイトルの場合はあえてアメリカで有名な方に弾いてもらうこともある」と意図的にギターサウンドをよく使っていることを教えてくれた。(余談として、なので防弾少年団の場合ライブバージョンが歌う人も聞く人ももっと面白い時が多い)

だからといって、防弾少年団の音楽が特定のサウンドを目指しているわけではない。 ラップモンスターは「僕たちはただヒップホップ音楽に根を置いただけで、イーストコーストやウェストコーストやオールドスクールブームバップサウンドだとかって決めて目指しているわけではない」として「必ずしもヒップホップでなくてもEDMにもポップにも素敵なバイブスがあるでしょう。 そのようなことすべてから影響を受けている」と説明した。

SUGAもやはり「実際、今の時代にどこがルーツだっていうのもどうかと思う」として「ケンドリック・ラマ-のように、誰が聞いても明確に地域に根ざすスタイルがあるチームでもなく、ただヒップホップ音楽が好きだというだけ。 ヒップホップを中心に、EDMやポップ、ロックなどのサウンドを借用することもできる。 そのようなジャンル的な区分に大きくこだわらないようにしている」と自由な音楽スタイルだと明かした。

このような音楽的価値観のためか、防弾少年団の音楽は他のヒップホップアイドルよりエレクトロニックサウンドが少なく使われ、メロディーラインを強調するなど、必ずしもトレンドだけを追いかけない自分だけのスタイルがある方だ。

これに対しSUGAは「ただ(聞いて)良いものが良いんだと思う」と簡単明瞭な答えを下した。

続けて「実はタイトル曲を作る時は考えなければならないことがとても多い。 聞いた時に良いことも重要だが、パフォーマンスやラップの明確性、ボーカル、パートの配分など悩むことが多い。 タイトルはとても計算をたくさんして書く。 タイトル曲は最初からタイトル制作として、一曲についてずっと違うバージョンを作りながら作業をする」と「聞きやすい曲」を作るための努力を明かした。

さらにラップモンスターとSUGAは「これから『花様年華pt.2』の作業を始めようとしている」として「精神的にも音楽的にもデビューの時よりはかなり成熟して進歩したと思う。 いいものを持ってくる」と次のアルバムを約束した。

アイドルとヒップホップ

防弾少年団の創作活動をさらに厳しくする主な理由は、アイドルという先入観のためだ。 いずれにせよアイドルであるからと一歩退いた部分もあり、また諦められない自分たちの欲も盛り込まなければならないためだ。

ラップモンスターは「最初はアイドルとしてデビューするのに少し拒否感があった。 元々はラップグループで出ようとしたが、急にチームが変わった。 それでも練習をしていたら、アイドルグループでも十分自分の音楽ができるんだなと思った」と口を開いた。

SUGAも「差し出すものがあれば、僕たちが得るものもある。 事実、音楽をする状況は不足していないようだ。 やりたいことをやっている」と明らかにした。

特に、彼らはアイドルだのヒップホップだのという議論に、自らはかなり距離を置いている様子だった。

ラップモンスターは「アイドルだからと低く評価されるのは僕も理解できる部分がある。 ただ(そんな言葉に)寛大になった。 『どれだけヒップホップ音楽か』『どれだけヒップホップに近いか』とかいう以前に、この音楽をただ聞いた時に気に入って『悪くないと思う』だったら良いし、そうでなければやめておくやり方だ」と率直な心境を表わした。

SUGAは「どちらにしろ音楽は作った人が判断するのではなく、聞く人が判断するものだ。つまり結局は、自分の好みでなければ嫌いで、好みなら良いということ。(聞く人の)個人の好みの違いなのに、あえて僕たちが直接乗り出して『これはこうなんです』と言うことじゃないと思う」と前もってヒップホップ的な部分をアピールしない理由を説明した。

もちろん、彼らは音楽家にとって最大の武器は音楽であることをよく知っていた。 ラップモンスターは「結局、分かる人には分かるし、喜ぶ人は喜ぶだろうという確信がある」と話し、SUGAも「最近は(とらえ方が)少し変わりそうだ。 最近は音楽を探して聞くより耳に入るから聞く時代なので、多くの人が好きならそれが良い音楽になるんだと思う。 僕たちはただ良い音楽を出してフィードバックを受けて、もっと良い音楽を出して、ただ(大衆の)判断に任せるんです」とし、良い音楽で自分たちに対する認識を変えると約束した。

アイドルとしてデビューしたメリットもある。 SUGAは「アイドルとしてデビューしたのは音楽的な部分においてはアドバンテージだと思う。 多くの人に聞かせることができるから」と口を開いた。

しかし、多くの人に聞かせる音楽が、本当に自分がやりたい音楽とは言えないからジレンマが発生する。

SUGAは「防弾少年団の音楽に満足しているわけではない。 それで個人作業を続ける。 率直に言って僕が追求する音楽を防弾少年団のアルバムでは100%見せることはできない」として「僕たちはアイドルで大衆を相手に音楽をしているので、その中間を探そうと努力し続けている」と自身の音楽と防弾少年団の音楽の間での悩みを打ち明けた。

そしてこのような悩みに対するそれなりの解決策が「創作」だ。 SUGAは「2年間で作った曲数だけでも60曲を超える。 それだけ作業をたくさんしている」として「ラップモンスターフィーチャリングとミックステープまで入れれば80曲にはなりそうだ。 リル・ウェインもこうはしないよ。 それほど努力してあれこれとたくさん試みている」とバランスを取るための努力をアピールした。

では、SUGAとラップモンスター自らが考える防弾少年団はどの辺に位置しているのだろうか。

SUGAは意外にも「防弾少年団のアルバムを『ヒップホップ音楽です』と言うには無理があるのではないかという気がする」と答えた。

続けて「最近は『ラップが上手だ』『ヒップホップジャンルだ』ということに重点があるとは思わない。 どうしても『態度』というのが重要になったが、そのような面においては無理があるのではないかと考える」と理由を明らかにした。

またSUGAは「さっきも言ったようにただ良いものが良いんだ。『ヒップホップだから良い』のではなく、ただ良いこと、ただ良い音楽をしたい。 もちろん、以前は『なぜ…』と思うこともたくさんあって(大衆の認識を)否定したりもした。 今は多くの人に感動を与える音楽をやりたい、『これはこれです』と強く押し付けようとする気持ちは減った」と消耗戦的なジャンル論争から距離を置く態度を見せた。

ラップモンスターも「インタビューに臨むときに怖かったのが『ヒップホップに出会う』というタイトルに僕たちが出ただけでも議論になりうるからだった」として「ヒップホップを長く聞いた人の中にはアイドルらしいコンテンツのせいで、防弾少年団の音楽はヒップホップとは距離が遠いという考えが多い。 僕たちもそれを悔しくは思わない。 『それでもこの子たちはヒップホップな部分がある』でも良いし、『この子たちはただのアイドルだ』というのも事実だ。 その人たちなりのヒップホップに定義があるだろう。 僕たちを(ヒップホップミュージシャンとして)認めてほしいのではなく、ただ見たままで見てほしい」と付け加えた。

今は議論を達観しているSUGAとラップモンスターだが、今の境地に来るまではかなり難しい心的な苦痛を経験しなければならなかった。 些細なことにそれほど意に介さないSUGAは少なかったが、性格的に小さいことにも傷つくラップモンスターはかなり大変だったと打ち明けた。

ラップモンスターは「僕のミックステープを聞いて人々が『この子はなぜ劣等感に溺れているのか』と言う。 性格がそうなんだ。 悔しがってたくさん傷つくけど『僕は正直に言って少し弱虫だ』ということに対してそれなりに受け入れた」として「数年、否定しながら生きてきたけど、こういう人間はそうやって生きなければならないようだ。 僕は自分を認める過程が必要だったし、それを出した後はすっきりした。 その話をしたので、他の話ももっとたくさんできるのではないかと思う」とむしろ自らを「弱虫だ」と認め、心的な安定を取り戻したことを明らかにした。

実際、過去には自身と関連したコメントを全て読んで傷もたくさん受けたというラップモンスターは「『僕はこの子が嫌い』と一瞬考えて5秒で書いたコメントを見て、僕は5時間、5日間考える。 その価値もないのに、一つ一つ気にした」と言い、「今は僕の健康のために全て読んでいるわけではない。 ミックステープを出して得たのはそれだ」と付け加え、笑いを誘った。

このような努力が通じたのか、ラップモンスターとSUGAは自分たちに向けた認識が少しずつ変わっていることを実感する時もあるという。

SUGAとラップモンスターは「本当に若干受け止め方が変わってきている。 一種の資格を得たかどうかの違いのようだ。 僕たちを知らなければ人々が言及さえしないが、それでもある程度聞いたことがあり、話すことがあるからそんな話が出てくるようだ」として「ハードなリスナーの中で僕たちの話をしながら『それでもこの子は一度見てみる価値がある』このように話してくれる方々が多くてそれだけでも幸いだ」と明らかにした。

さらにSUGAは「とにかく音楽をする人なので音楽として認められたい。 それがラップであれ、音楽であれ、ビートであれ、編曲であれ認められたい」として「だからといって1、2年音楽をするわけでもなく、本当に長くするつもりだから、すぐに認められなかったからといって大きく気にしない。 ただ、一つ約束できることは、すべての人が僕たちを好きになることはできなくても、多くの方々が僕たちの音楽を聞いて、一緒に音楽をしていくだろうということだ」と約束した。

最後にラップモンスターとSUGAは「僕たちを嫌いなら仕方ないが、今後さらに良くなるだろうから寛大な気持ちで見守ってくれれば、きっと僕たちは良くなるだろう。 違うなら別にそれで」、「僕はただ良い音楽を聞かせてあげる。 いつになっても」と付け加え、自分たちの、また防弾少年団が追求するヒップホップがどんなものかをもう一度教えてくれた。

東亜(トンア)ドットコム、チェ・ヒョンジョン記者