はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

アイドルと制作者、誰がアーティストなのか/時事IN 記事日本語訳


HYBE対ミン・ヒジンに関して興味深い記事があったので訳してみました。

Papago下訳。

www.sisain.co.kr

 

アイドルと制作者、誰がアーティストなのか

ミン・ヒジン代表は、ハイブとの紛争がNewJeansの模倣のせいだと主張する。 自分が制作したグループの価値が損なわれるということだ。 この論理は、韓国アイドルの脆弱な芸術的立場を表わしている。

イ·サンウォン記者

4月25日の夕方のことを、ある人は2008年の「あの記者会見」と比べる。 悪口と涙が絡まったADORのミン・ヒジン代表の記者会見で歌手ナ・フナ氏の16年前の「ズボン事件」を思い出したのだ。 世論を変えたという点で、2人は似ている。 あるメディアはナ・フナ氏の記者会見について「地上に降りてきたセレブリティ(有名人)が再び空に上がった星になった」と書いた。

ミン・ヒジン氏もセレブになった。 背任疑惑を受けていた所属事務所の代表から一躍「クソオヤジ(개저씨)」に対抗した女性経営者、アーティストをよく世話した「お母さん」に浮上した。 ところがその結果、ミン代表がつくったアイドルグループNewJeansが揺らいだ。

 

ミン・ヒジン代表の多少「荒っぽい口調」を取り除いてみれば、今回のことは単純だ。 親会社のハイブと子会社のADOR代表の間の葛藤である。 ハイブは、ミン・ヒジン代表が親企業から独立し、NewJeansを引き抜くために違法行為を犯したと主張する。 ミン代表は、それは事実ではなく、むしろハイブがNewJeansの活動を妨害したと反論する。ハイブ のまた別の子会社ビーリフトラボ所属のアイドルグループ、ILLITが「NewJeansスタイル」を模倣したという主張も展開した。 ハイブはミン・ヒジン代表を背任容疑で告発した。 真実を巡る攻防は捜査と裁判で決まる予定だ(『時事IN』第869号「ミン·ヒジン『本人登板』NewJeansの未来は?」記事参照)。

 

業界の関係者が見るには、破局の根源は功績に対する評価の切り下げだ。 「業界にいじめが多い」というミン代表の言葉に共感する同僚が多いと話す。

「実務者が愛情を込めて企画した所属アイドルグループがうまくいっても会社はなかなか認めない。『お前がよくやった結果ではなく、どうせうまくいく子たちだった』『自分たちの会社から出てきたから成功したのだ』という態度なんだ」

ミン・ヒジン代表は例外的な経営者の特別な決断を経験した経緯がある。 SMエンターテインメントのイ・スマン当時総括プロデューサーが、若い平社員のミン・ヒジンに大きな実権を任せて名前が知られるようになった。 移籍後、NewJeansをヒットさせた彼女は、ハイブとバン・シヒョク議長から相応の待遇を受けることができず、むしろ罵倒されたと主張する。

 

ミン・ヒジン代表の功績とは何だろうか。 彼女とADORはNewJeansの「オリジナリティ(固有性)」を主張する。 ミン・ヒジン代表の初の公式の立場文は4月22日に発表された。 ミン代表は「ILLITのNewJeansコピー問題」が葛藤の原因だと主張した。

ハイブの子会社所属のILLITが「ヘア、メイク、衣装、振り付け、写真、映像、イベント出演など芸能活動のすべての領域でNewJeansをコピーしている。 ILLITは『ミン・ヒジン風』『ミン・ヒジン流』『NewJeans亜流』などと評価されている」と主張した。 これに対して問題を提起すると、ハイブが報復措置としてミン代表を追い出そうとしている、というわけだ。

 

「『ミン·ヒジンスタイル』が特別なのは確かだが…」

NewJeansが新しいモデルを提示したということには大方意見が集まる。 2021年の本『女神は褒め言葉だろうか?』で女性アイドルの特性について書いたチェ・ジソン評論家はこう語った。 「NewJeansはデビュー当時からほとんどの女性アイドルと少し違っていた。 主なターゲットが10代で、特に女性ファンが好むだろうと思った。 メンバー全員が長いストレートヘアだったのもユニークだった。 華やかでエネルギッシュな以前のK-POPとは音楽スタイルの違いがあった。 相対的にスローて聞きやすい音楽を持ってきた」。

キム・ユンハ評論家は「ミンヒジン風」がKポップ内部で通用する概念であり、NewJeansがその頂点だと話した。 「ミン・ヒジン氏は少なくとも10年以上、誰でも分かるあのスタイルを築いてきた。 青春の清らかで鮮明な瞬間をK-POP愛好家なら愛するしかない形で見せるユニークな感覚がある」

 

しかし2人とも「ILLITがNewJeansをコピーした」「ハイブがミン・ヒジンのものを奪った」という主張には軽率には同意しなかった。 「NewJeansは『ゲームチェンジャー』ではある。しかし、誰かが流行をリードすれば、本来みんな真似するものだ」(チェ・ジソン)。「大衆文化の特性上、完全なオリジナリティを主張するのは非常に難しい(キム・ユンハ)。」評論家たちがこのように言う理由は、NewJeansスタイルのオリジナリティを否定したからではない。 文脈上、むしろその反対に近い。

 

長い間、韓国アイドル産業は「操り人形」という批判を受けてきた。 芸能事務所に抜擢され、他人が書いた歌とダンスを歌い踊る彼らを果たしてアーティストと見ることができるかということだ。

ファンダムと論壇は「協業だ」と反論する。 彼らはアイドルの公演を演技に例える。 作家の台本と監督の指示に従っても、俳優個人の固有な再解釈が加味されるということだ。 「踊って歌う人たちも特定部分の職人であり、芸術家と見ることができる。 たとえある曲を原曲者の創作意図と全く違う方向に具現したとしても、依然としてそれは歌手自身の歌だ(チェ・ジソン)」

 

ミン・ヒジン代表の記者会見はアイドル産業の支えである「協業論」を揺さぶる。 記者会見で彼女は「ミン・ヒジンスタイル」の独創性がNewJeansの成功に決定的影響を及ぼしたというような発言を何度もした。 協業論によれば、アイドルアーティストの固有のパフォーマンスは複製できず、たとえ誰かが真似しても「原本」の価値は下落しない。

しかし、ミン代表は記者会見場でこのように述べた。 「コピーが出てくるとしますよね? …以前あった私たちのブランディングが既成化されるんです。 私たちのユニークさが既成化すると。 …そうすると、100%全部NewJeansになる。 そうなったらNewJeansにも悪いことだし、彼ら(真似するグループ)にも悪いことです。 長期的にこれが業界を壊すんですよ?」

この認識によればアイドルグループの固有な芸術性は、たとえ存在するとしても作品に及ぼす影響力としては微々たるものだ。 アーティストの個性は十分にコピーできる。 商道徳を守る業界関係者たちのおかげで保たれているだけだ。

 

窮地に追い込まれたミン・ヒジン代表がK-POPという文化芸術の性質を歪曲するのだろうか? 業界の底辺から頂上まで経験した彼女の判断が、むしろ現実論なのかもしれない。「協業を通じた芸術」「コンセプト芸術」という発想は現代芸術界に100年以上根を下ろした思想だ。 それでも韓国アイドル産業が「工場式」という批判は止まらない。

誰も否定できない成果を得た後も、BTSのRMは昨年「K-POPの驚くべき成果がアーティストを非人間化するのか?」という質問を受けた。 国内メディアの多くは「荒唐無稽」「無礼」な質問だと書いた後、「それがK-POPを輝かせる」というRMの返事の一部だけを紹介した。 「所属事務所は私の答えを喜ばないだろうが、 部分的にはそうだと思う」という前段の言葉はそれほど報道されなかった。

 

分業と専門性、アーティストの空間はどこに

Kポップを経営学の観点から見る立場からは、ミン代表の言葉に力を入れる。世界的な人気をプロデューサーたちの慧眼から求める見方だ。

慶北大学のイ・ジャンウ名誉教授(経営学部)は本『K-POPイノベーション』でK-POPの成功は文化と技術の結合のおかげだと書いた。 力点は文化よりも技術にある。

文化芸術は個人のクリエイティビティーと自発性に頼るが、技術は意図的で人為的な革新が可能だ。 イ教授によるとKポップは「個別のアーティストや個人プロデューサー中心の文化芸術のフィールドから抜け出し、カルチャー・テクノロジーという概念を取り入れ、世界市場で通用する多様なアイドルを生産し、消費させるシステムを構築した」。

革新の目標は「体系的な反復生産」であり、革新家としてはイ・スマン、バン・シヒョクなどのプロデューサーを挙げた。 キャスティング、トレーニング、プロデューシング、マーケティングなど、プロデューサーが成し遂げた革新をまとめて「アイドル化」と呼ぶ。 本でイ教授はKポップの革新が同じものを大量に作り出す「工場式」とは少し違うと書く。 それぞれ異なる「農作物を育てて生産したり、料理のような必要な技術を活用」することに近いのだと。

 

革新の結果、アイドル個人のクリエイティビティーや天才ぶりと、彼らの成功の間の相関関係がそれほど強くないという事実が立証された。 各種の市場調査と試行錯誤を経た業界専門家たちはクリエイティビティーよりは「ビジュアル(外見)がファンになる理由第1位」という事実を突き止めた。 高度な分業と専門性が完成度を高めるという結論も下した。 専門作曲家と専門の振付師、専門プロデューサーのオーダーは、アイドル個人の再解釈の余地を狭めた。 莫大な人材と資本が投入されるため、リスクを最小化しなければならなかった。

音楽的才能があっても自己主張が強かったり、意志が弱い練習生はデビューさせない。 大型企画会社は彼らに代わる分の練習生「プール」を常時備えている。

 

このすべての過程を総括し、そのように成功の頂点に立った人物がミン・ヒジン代表だ。 彼女はNewJeansデビューとその活動プロセス全般に絶対的な影響力を及ぼした。

記者会見でミン代表はこのように述べた。 「選抜できる子はミンジしかいなかった。 残りの子たちはもっと練習が必要だったり、年を取りすぎたり、私と少し合わないから。(···)『私たちがガールズグループに求める方向性をオーディションにも入れてブランディングをしなければならない』という考えで(選抜)した···進めていたのに(バン)シヒョクさんが突然電話してきて『ヒジンさん、私はどんな音楽をすれば良いのかよく分からない。 コンセプトを考えたものがあるか』と言った」。

方向性も、選抜もミン・ヒジン代表の「フィーリング」で決まった。 音楽はバン・シヒョク議長と議論し、独自の方向に向かった。 この話のなかでNewJeansの芸術的主体性は見られない。

 

ミン・ヒジン代表は「エミ(母)」の気持ちだと話した。 彼女からすればNewJeansは「子どもたち」であり、彼女たちの成功は「ミン・ヒジンスタイル」の産物だ。 それを複製して他のアイドルに着せると、NewJeansの独創性はすぐに揺らぐ。

逆説的にも、NewJeansを守るために彼女は自分の功績を強調し、NewJeansの個別性を貶めて、ハイブを糾弾した。 自由で主体的なアーティストを演じていた彼女たちはその日、涙声の10代の子どもになった。