はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

世論裁判と不信社会/「飲酒運転」報道コラム訳

m.kyeongin.com

京仁新聞(京畿道、仁川地域の地方紙)に掲載されている「月曜論壇」というコラムの訳です。

筆者は元国会の副報道官らしい。

 

世論裁判と不信社会

2024.9.1.

イム・ビョンシク国立群山大学教授·元国会副報道官

BTSのシュガが電動スクーター飲酒で「送致」
過度なバッシング・うかつさ 振り返る必要
海外メディア「行き過ぎた世論裁判」批判
「なぜ執拗なのか理解し難い」という反応
我々はいつ寛容と均衡に近づくのか……

飲酒状態で電動スクーターに乗った疑いで立件されたグループBTSのシュガが24日ぶりに検察に送致された。 シュガはこの1ヵ月近く、世論の主な関心事だった。 振り返れば、世界的なグループのメンバーが関ったので関心を持つに値すると思ったが、行き過ぎた世論裁判ではなかったかという居心地の悪さを感じる。 電動スクーターの飲酒運転を庇おうということでも、有名人だから寛大になろうということでもない。 ただ、過度なバッシングであり、知る権利を口実にした大騒ぎは振り返る必要がある。 そのうえ、健全な兵務行政まで言いがかりをつけ、不信社会を助長する人々には警戒しなければならない。

多くの人は、シュガを巡る世論の流れを見ながら、先日人生を終えた俳優のイ・ソンギュンを思い出したという。事実を越えた推測に基づいた報道によって、これまで多くの芸能人が自ら命を絶った。 その度に批判の声は殺到したが、時間が経つにつれ慢性的な報道は繰り返された。 当時、その悪質な報道がイ氏を極端な状況に追い込んだことは否定しがたい。 韓国社会はいつからか、一度のミスさえ許さない索漠としたところに変わった。 その代わり、過度な道徳的基準を強要したり、何でも言葉を投げつけて盗み見る「のぞき見社会」になった。

海外メディアは、韓国社会を憂慮すべき視線で見ている。 国ごとに社会的な雰囲気と情緒が異なるため、彼らの主張の全てに納得するわけではない。 しかし、かなりの部分が現実を正確に反映しているため、うなずくしかない。 インドメディア「インディア・トゥデイ」は「この事故で人命や財産被害が発生しなかったにもかかわらず、シュガの無条件脱退を要求している」とし「シュガと所属事務所の謝罪にもかかわらず『憎悪の行列』は沈静化しない」と憂慮した。 続けて「シュガを思い通りにできるフリーパスを与えたのか」として過度な世論裁判を批判した。

また「ELLEインディア」は韓国社会がKポップアイドルを非人間的に待遇していると批判した。 このメディアは「ハリウッドやボリウッドでは誰かと付き合ったり、太ったり、結婚することについて謝ることはない。 だが、韓国ではすべてのことをメディアやファンが厳格に監視する」とし「彼らの創意的能力は強烈な大衆の監視に隠れて個人的、職業的困難を体験し、大衆の娯楽と判断対象に過ぎない存在に転落する」と分析した。

海外メディアの報道を「物知らずの主張」と貶めるには正しすぎる指摘だ。 シュガは何度も自筆の謝罪文を公開した*1。 彼は過ちを深く反省し、同じことを繰り返さないと誓った。 ほとんどの国民は、これをきっかけに、電動スクーターも自動車と同じ道路交通法の適用を受けることを知った。 筆者も同様であり、シュガも同様である。 韓国社会は芸能人に公人にふさわしい行動を要求する。 一面納得しつつも、蜂の群れのような罵倒と非難は度を越していると思う。倒れた人を繰り返し踏みにじる無寛容社会では、希望は期待できない。 ひいては世論裁判は本質を曇らせ、再起を妨げる。

シュガから始まった火花が兵務行政にまで飛び火したのは不信社会に似つかわしい。 兵務庁は社会の関心レベルを分類し、服務形態を集中管理している。「兵籍別管理制度」*2は高位公職者とスポーツ選手、大衆文化芸術家、高所得者の子供を別に分類し管理している。 公正な兵役と服務不良を最小化するためのもので、対象者は今月現在3万人余りに達する。 彼らを集中管理することで雑音をシャットアウトしようとするものだが、肯定的に受けとめている。 業務の後に発生した事件・事故は当事者の責任に属する。 事故以前までシュガの服務形態は極めて誠実だと知られている。 一部のユーチューバーに限ったことではあるが*3、精査されていない無分別な疑惑の提起は兵務行政に不信を招くだけだ。

フランスの週刊誌「パリ・マッチ」は「シュガはここ数週間、韓国メディアの過度な標的になった。 なぜそんなに執拗なのか理解し難い」と述べたが、本当に憂慮される事態だ。 「ビルボード」は「私たちは決してシュガに失望することはない。 軍服務を無事に終えることを願う」と述べた。 韓国社会はいつになればこのような寛容と均衡に近づくことができるのか、うらやましい限りだ。

 

*1:本人からの謝罪文は2度発表。自筆は1度。カメラの前での謝罪が1度、です。

*2:兵務庁「公正な兵役文化造成のための兵籍別管理制度ーYouTube 

*3:ユーチューバーだけではなく、マスコミも「疑惑」を報道しています。「SUGA 服務怠慢」の検索結果