はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

黄色いButter

世界的大ヒットのDynamiteの後、BTSの2曲目の英語曲としてButterがリリースされました。

 

 リリース前に聞こえてきたのは「サマーソング、ポップチューン、ダンス…」なんて単語。「かわいい告白」なんてフレーズもありました。

私は単純に「もう一度英語曲でグラミー狙いなのか」と思いました。

DynamiteでビルボードHOT100一位、グラミーノミネート…同じ路線の「英語の楽しい曲」で狙うんだなあと。

 youtu.be

MVを見ると、確かに楽しい!
MVの構成もDynamite並かそれ以上にシンプルというか。かつての花様年華シリーズやONみたいな思わせぶりなところは(一見)ないし、音も映像もダンスもとにかくスタイリッシュ。

 

 ところがリリース後のVライブの画面をキャプチャした画像がながれてきました。

f:id:piao-qin:20210524182123p:image

RM:僕たちはなんでこんなに黄色いんだ?


f:id:piao-qin:20210524182129p:image

JIN:なんで黄色いかって?僕たちは今回「Butter」だから黄色いんだよ


f:id:piao-qin:20210524182135p:image

RM:それに僕たちは黄色人種じゃないですか?「Butter」レッツゴー

 

……え?そうだったの?

Butterの黄色の意味について、まったく頭になかったのでびっくりしました。

 

Butterは楽しいダンスチューンでありながら、そのイメージになっている「黄色」=黄色人種=アジア人のシンボルとして出てきたのではないかという解釈が私のTLを駆け巡りました。

私も思わずツイート。

そういえば、と思い出したのがリリース直前のアメリカ・Rollingstone誌のロングインタビュー。ここでRMがこんな話をしていました。

The way we think is that everything that we do, and our existence itself, is contributing to the hope for leaving this xenophobia, these negative things, behind. It’s our hope, too, that people in the minority will draw some energy and strength from our existence.

 The Triumph of BTS: Rolling Stone Cover Story - Rolling Stones

 

私たちが考えるのは、私たちがするすべてのこと、そして私たちの存在自体が、このゼノフォビア(外国人恐怖症)、このような否定的なことを古いものにする希望に力を貸しているということです。 マイノリティが私たちの存在からエネルギーと力を引き出すことも私たちの望みです。

 

 さらに溯ると、アメリカで吹き荒れているアジアンヘイトへのカウンターツイートをしたのが3月30日でした。

 

 リリースの2カ月ほど前に出来てたというButter。上のツイートはまさにButterの制作が佳境を迎えているころ、同時進行で作られたものである可能性が高いということです。

 さらにはMVのビハインドでもRMがだめ押しのように「黄色」について言及しています。

f:id:piao-qin:20210525123256j:image
f:id:piao-qin:20210525123259j:image

 

 じゃあ何故黄色なんですか?と聞きたいんですが、その答えはないようです。

 

しかし一方で、外向けにはそんな深読みをさせないような発言が続いてます。

youtu.be

JM:タイトルから分かるように聴きやすい曲をと思って準備しました。大それたメッセージがあるわけではありませんが、少し照れくさいですがバターのようになめらかに溶け込んで君を虜にするという、かわいい告白ソングのように受け止めていただけたらと思います。

JK:Butterはとてもシンプルです。多くの方々が今年の夏はBTSのButterと一緒に楽しく過ごしてくだされば、という気持ちです。

 メッセージは「ただ楽しく」。DynamiteやLife Goes Onと比べてもずいぶんとあっさりしています。


さらにRMもほかのインタビューで

「“Dynamite”は、パンデミックのさなかに世界中のリスナーへ希望を与えようとした軽快なディスコ・ポップでした。“Butter”は……まあ、夏ですし。調味料のような、さらに軽快なダンス・ポップ・ソング、サマー・アンセムって感じです。とにかくポジティブなヴァイブスと陽気なエナジー。それだけ。“Butter”はそういう曲です」

BTS、米ビルボードとのインタビューで新曲「Butter」のコンセプトやソロ・プロジェクトなどについて語る | Daily News | Billboard JAPAN

 

……逆に怪しくない?(笑)

  だって、あのRMですよ?

 

まあでも彼らが公にしている「ただ楽しんで」という発言と、 黄色に意味があるということは対立したり矛盾しないと思うんですよね。

 

 

最初に引用したRollingStonesのインタビューがある意味すべてを語っていんじゃないかと思っていて。

私たちが考えるのは、私たちがするすべてのこと、そして私たちの存在自体が、このゼノフォビア(外国人恐怖症)、このような否定的なことを古いものにする希望に力を貸しているということです。 マイノリティが私たちの存在からエネルギーと力を引き出すことも私たちの望みです。

 

アジアの小さな国からやってきた彼らが歌って踊る最高のサマーチューン、Butterを世界中の誰もが楽しむこと。

Dynamite以上に売れて、SUGAが「1位になれると思います。ならないといけない。やってみせます」と言ったように、チャート1位を取って、グラミー受賞をもう一度狙うこと。

そういうすべての活動や成果、ひいては彼らの存在そのものを通じて、ヘイトで辛い思いをしているマイノリティが、エネルギーと力を持つこと。

それが彼らの望みなのでしょう。

 

それはアイドルを自覚的に選んできた彼らの存在意義に通じるんじゃないでしょうか。
*こう考えると同時に世界で行われるマクドナルドの「BTSミール」もすごいですよね。まさに日常に溶け込む黄色…

 

正解かどうかなんておそらくずっと分からないんでしょうけど、少なくとも彼らのプレゼンスが欧米で高まること自体が、KOREAN WAVEであり、ASIAN WAVEな訳です。そして彼らがひっさげて来た曲は黄色であふれている。

 

で、その視点で曲を改めて聞いたりMVを見ると、いろいろ気がついたことがあります。ツイッターで教えてもらったものも含めてこんな感じです。

 

  • Vのパートの”I owe it all to my mother"(全部僕の母さんのおかげ)はルーツやアイデンティティーのことのよう。
  • SUGAパートの”Hate Us~(Love us)”、すんごいムカツク顔で(笑)煽ってます。そしてコーラスの”Love Us"はあまり聞こえない。
  • さらにこのあたりから、裏でオリエンタルなメロディーが鳴ってる。いわゆるペンタトニック音階。何か伝統楽器かなとおもったけど、シンセですね。一聴して思い出したのはYMOイエロー・マジック・オーケストラ)のサウンド

こじつけもあるかも知れませんし、探したらもっと出てくるかも知れません。

とにかく、RMの「僕たちは黄色人種じゃないですか。Butter,Let's go」はそんな解釈も許してくれて、辛い状況にいる人たちに「味方がいる」と思わせてくれる言葉ではないでしょうか。

 

最後にこちらは付け足し。某有名KPOPライターさんが「黄色への意味づけ」を否定していたのを見かけてのツイート。

 

追記:高橋芳朗さんによるButter解説

2021年5月26日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』

こちらのなかでも、後半で「黄色」について触れていて、解釈がほぼ一致したので嬉しい。

miyearnzzlabo.com

 

21.6.4.追記

ジョングクがmelon  stationで公開したプレイリストにColdPlay Yellow のカバーが入っていたようです。

f:id:piao-qin:20210604224420j:image

‎Emmit Fennの"Yellow"をApple Musicで

点と点がつながりますね。

 

追記の追記(2021.8.28.)

グラミー賞ラッパー、Megan Thee Stallionがリミックスに参加

2022.03.21.一部削除