『BTS オン・ザ・ロード』の著者、ホン・ソクキョン ソウル大学社会科学大学 言論情報学科教授の解説動画が、同大のチャンネルに上がっていましたのでざっと訳します。
- BTSを研究するようになったきっかけ
- BTSが多様な国で人気がある理由?
- BTSが全世代に人気のある理由?
- BTSが人種的な限界を超えた理由?
- BTSが長い間愛される秘訣は?
- BTSファンダム ARMYの特徴?
- パンデミックのなかのBTS?
- 好きなBTSの曲は?
- 最後のひと言(BTSにかけてあげたい言葉は?)
*見出しから当該部分にジャンプします。英語訳が見れますのでご参考に!
BTSを研究するようになったきっかけ
ソウル大の教授がBTSを研究するということについて、とても興味深く思われるんですが、大衆文化の研究領域では、世界的に大学で大衆文化についてたくさん研究されています。ビートルズの研究はとてもたくさんありますし、ロックカルチャーなどが研究されてきました。ですがBTS現象こそ、実はこれまでの出来事、これまでのビートルズ現象やそのほかのものより興味深い現象だと考えています。
世界的にはローカル中のローカルな韓国という、そして韓国語を使う大衆文化のなかからグローバルになった大きな事件ですから。花様年華時代から、そして特に2018年のWINGSアルバムが世界的にヒットし、この人たちを積極的に研究し始めました。
BTSが多様な国で人気がある理由?
社会学的な話からすると、グローバル化が十分に進んでいたことで、いまBTSファンの中心である若い人たちはYouTubeだけじゃなくSNSを幼い頃から使って育ってきたので、非常に多文化に対する感受性が高いです。
(多文化感受性:人種、性別、社会的地位宗教、理念などに反った集団の文化を同等な価値と認識し情緒を理解し受け入れること)
私たちが考える例えば言葉の壁なども障壁だと考えません。最初からそうやって露出された状態で育っているので。そんなグローバル化の過程が産んだ新しい感受性が大きな役割を果たしています。そしてデジタル文化がメッセージの生産と流通と消費を自由にしました。これを(メッセージの)民主化と呼んでいますが、誰でもとても簡単に映像を編集し、つくりだし、コミュニケーションまでできるようになりました。それで彼らはSNSを活用してBTSの数多くのコンテンツを作り出しています。
このジェネレーション、すでにそれが可能な世代なんですね。
それでこの二つ(多文化への感受性とコンテンツの再生産)が出会い、成功をもたらしたと思います。
BTSが全世代に人気のある理由?
BTSはヒップホップアイドルグルーブです。
K-POPの核心であるアイドルシステムというのは実はヒップホップとは完全に反対の概念です。ヒップホップといえば、自分の声で本人の経験を語るもので、自分が直接経験したことを語らないといけませんが、アイドル主体のK-POPは、本人たちに作曲などを許可しない場合がほとんどでした。
BTSはそれを自分たちの声を自分たちの経験を歌に込めることに成功したのです。とても直接的な言葉が出てきます。「自己啓発書が一番嫌いだ」こんな話、体制批判的な話、努力して勝てという資本主義的な経済原則に対する疑問などです。
外国から見たときは受け入れるのが難しい部分があったのが、アイドルたちが持っている文化の産業性なんですが、この壁を越えるのに成功したわけです。自分の声で自分の経験を語ったことで、熱狂的に受け入れたんですね。そしてDOPEやFIREやNOT Todayのような曲はすべてそういうメッセージが込められています。
BTSが人種的な限界を超えた理由?
7人全員が韓国人で地方出身です。
リーダーのRMはイルサン出身ですが、大きくソウルと言ってもいいのに、絶対にソウルと言わず自分はイルサン出身だと言います。UNで演説したときも私はイルサンの人間ですと話すんですが、彼らは地域性を全く消しません。
他の大きなグループは言葉の問題を克服するために国外のメンバーが入ったりしていますが、BTSはよりローカルなんですね。ある意味そのような地域性を持った人たちが成功できるほどグローバル化が進んでいるということですし、ローカルにいる人たちもある意味普遍性を獲得できるということを確認させてくれています。
そして東アジアの人間は非常にステレオタイプに理解されてきました。メガネをかけて勉強ができる人、あるいは映画の中では武術がうまくて、一度に10人も倒しても、全く男性としての魅力はない。アクション映画の定番の結末としてヒロインの愛を得る資格は与えられていないんです。
しかしついに韓国のK-POPスターたちは全世界の女性ファンたちからロマンチックな幻想の対象になったということです。これはある意味で大きな感受性の変化が起きているということです。
BTSが長い間愛される秘訣は?
最初の理由は何より広範囲のアミが支えてくれているということですが、実際、非常にファン層が広がっています。
音楽の内容は変わってきました。最初はヒップホップ色が強かったので、若い世代が反応しましたが、DNAあたりからはよりPOPなものが強くなり、多くの人が歌詞を理解できなくても聴いただけで楽しい、そのような声が聞こえるようになりました。
BTSファンダム ARMYの特徴?
大衆文化の面で興味深いのはファンダムですね。全世界のファンダムが実は韓国のファンダムの影響をとても受けています。
影響がどういうものかというと、ファンダムが作動する方式です。
あるグループがアルバムを出したらそのアルバムのヒットに向けて「総攻撃」といって一度に音源のストリーミングを繰り返し、アルバムをいつのタイミングで買い、次にラジオにどれだけ出なくてはいけないか。そのときファンダムの実力やパワーを見せつけるというか、実際に展開するわけですね。これをアーミーは全世界でするんです。
アメリカのアーミーがやってきたことを見ると非常に感動的なものが多いんです。ラジオがとても大事なんですが、非常に保守的なのもラジオで、外国語の曲ですから全くかけてくれずなかった。それで曲がかかるように途切れずDJにリクエストを送ったり、ストリームをするのでも特定の方法で聞かなくてはカウントされないので。こんな風に韓国のファンダム文化が持っていた良いい文化、私たちが朝貢文化と言ったりしますが、誕生日には誰かの名前でどこかに木を植えたり井戸を掘ったりするんですが、アーミーたちはこれが全世界にいるので。アメリカのBLMが支援を募ったときに、すぐに見えるように反応したり。韓国のファンダムが作動する方式を習ってそれがより大きく、世界的に見えるんですね。
パンデミックのなかのBTS?
これまでは教育を受けてある意味「政治的な正しさ」、人種差別はいけないことだということで公的な場所では表現されなかった、正しくないとみなが知っている状況でした。でも内面化された偏見はあるので、パンデミックの状況はその封印を解いてしまった。
グローバル化の進展で若い世代が多文化の感受性を培ってきたのはたしかですが、そのような偏見を超えるほどには至っていないし、世代差も大きいです。
BTSは目立つし人気があるので、降り注ぐいろいろな人種主義的なヘイトを先頭で受けている部分があります。彼らをおかしな風に表現したり、この間はドイツであるDJが彼らを卑下したりそういうことが起きています。
それで彼らは平穏な立場にいることができません。ある意味では一番先頭に立って人種主義的な偏見を受ける、「防弾」としての役割をこれからも果たしていくのではと思います。
好きなBTSの曲は?
名曲が多くて1曲をあげられませんが、私はMIC DROPが好きです。
なぜなら彼らのHIPHOP性がそのまま出ていながら、ダンスやパワー(がある)。
彼らは何よりステージが本当にうまいんですが、そのすべてを注いでいるのがこの曲だと思います。
ヒップホップ文化が韓国的に表現されたのがこのMIC DROPだと思います。
最後のひと言(BTSにかけてあげたい言葉は?)
彼らに直接会えるとしたら、肩をたたいてあげたいです。
ご苦労さんだったね、たくさん努力してきたからこれからはもう少し自分の人生を隠さずに生きてみてと言いたいですね。
20代にできることを出来ないままのことがとても多いので、それを自由にやってみてと言いたいし、実際そんな風に個人の人生を豊かに生きることができたら、また違う音楽が生まれそうです。それを期待します。