はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

人間的ミックステープ、人間的ミン・ユンギ(記事訳)

「BTSを読む」キム・ヨンデさんによる「D-2」レビューです。

 

 

元記事こちら

www.harpersbazaar.co.kr

人間的ミックステープ、人間的ミン・ユンギ

BTSが青春の不安と希望を歌うグループなら、シュガはその情緒の最も重要な部分に位置するメンバーだ。シュガのミックステープ「D-2」はこれまでの3年間に変化した彼の自我をそのまま投影している。

 

アーティストとして、そして人間としてシュガの最も大きな魅力は率直さだ。

彼は自分を綺麗に飾らない。あれこれ遠回しな言葉を使わず、幻惑的な表現で自分の本心をそれっぽく隠したりもしない。何よりも彼は自分の影(Shadow)に誰よりも率直に向き合い、それを露わにするミュージシャンだ。自分を支配する不安と暗闇を認めながらも、その間も決して明日に対する希望を捨てない。

 

BTSが青春の不安と希望を語るグループだとすれば、シュガがその情緒の最も重要な部分を占めるメンバーであることは疑いの余地がない。私は彼の音楽を聞くとすっきりする。私が言葉に出来ないことを、粘りのある表現としっかりとした態度で繰り出す痛快さ。「あんなことぐらい自分でも考える」といった洞察不足や「あんな風にしか言えないのか」などという語彙や表現の拙さもないラッパー。何よりも自分が言わなくてはいけない言葉には少しのためらいのない、あの生々しいアティテュード。音楽はそうやって人の姿に似るのだ。

 

シュガの新しいミックテープ「D-2」もやはりこのような飾り気のない面を基本に、これまで3年間の自我の変化をそのまま投影している。アルバムタイトル曲の「大吹打」はグローバルスターであるシュガの現在の姿を華麗に見せてくれる。「IDOL」と「DDAENG」を結ぶ韓国伝統音楽とのクロスオーバー曲であり、このような試みが単に興味を引くための一時的なものではなく、一貫した脈絡を持って持続的に行われてきたということが、その誠実さを物語ってくれる。加えていまこの曲を聴いている多数の大衆が韓国伝統文化に慣れていない外国人だということを勘案すれば、その意味はいっそう際立つ。

 

王のお出ましを知らせる「大吹打」の威容は、トラップ特有の攻撃的なスワッグと結びつき、彼の批判者たちの顔の前に降り注ぐ痛烈なメッセージの効果を最大限にする。「大吹打」の生々しいメッセージは、これまでシュガの音楽に親しんだ人たちにとってはとりわけ新しいものではないだろうが、このアルバム全体を聴いてみると、むしろそれは例外的な問題意識だということが分かる。

 

youtu.be

 

歌詞と情緒的な側面からこのアルバムを支配するのは意外にも「諦念」と「顧みること」だ。

 

世界最高のスターとして彼を締め付けるプレッシャーは、彼をただ自信満々でふてぶてしい人間にするよりも、多分に熟考する人間、自分の外をより意識する存在にしたようだ。3年前、彼の初のミックステープが示した価値は「証明」と「過去」だった。彼は自身について知らせたかったし、歩んできた道を回想し、そのメッセージは常に外への叫びに集中していた。しかし今や彼はいまの自分と自らを囲む世界と周りの人々、そして自分の内面をより意識する人になっている。前作より遥かに広がった音楽的スペクトラムと、音楽に近づく柔軟になったマインドは、彼の進化した音楽家性をくっきりと表している。

 

アルバムは「あの月」を見ながら「よく分からない」という言葉で扉を開ける。英雄的な存在としてのスワッグの代わりに、疑問を抱かずにはいられない、しかしそれすらも自然な自分として受け入れる姿だ。AgustDの変化した姿は、さらにはこのアルバムの最も攻撃的な瞬間にも姿を現す。

彼は「どう思う?」という質問を無愛想なトーンで繰り返すが、そのなかで意味の無い争いを受け入れたり、自分を信用しない他人に何かを無理に納得させようとする様子はもはや存在しない。むしろそのようなこと全てに対し、何の関係があるという冷笑と諦めが感じられるだけであり、それは大人になったシュガの一面だ。彼は理解できない世界の姿に怒りを表すよりも「おかしくはないか」と疑問を投げかけるのみであり、違う人生を望んでいたのにいつの間にか似たような大人になってしまった自分を叱りながら、ミュージシャンとして最も弱い28という年齢を迎える。

変わっていった「人」たちを恨むよりも、彼らも結局自分と同じ存在でしかないと悟った彼は「一人酒」をしながら極度の孤独と向き合い、そしてついに自分を捕らえて離さなかった未練と自責の最後の欠片を、親友に送る最後の手紙「Dear my friend」の切々とした告白の中に解放(Set me free)し解き放つのだ。

 

BTSのアイドルシュガから、証明を求めたAgustDから、いまや一人の人間、そして成熟したミュージシャン「ミン・ユンギ」の新しい進化である。