はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

過去のミックステープレビュー(記事訳)

「BTSを読む」著者キム・ヨンデさんによる、過去のミックステープのレビューです。原文こちら。www.harpersbazaar.co.kr

BTS ラップラインの記録

シュガのAgustD、RMのRMとmono,J-hopeのHope Worldまで、きちんと積み重ねてきたBTSラップラインのミックステープたち

 

AgustD,生のエナジー

Agust D - Agust D by BTS | Free Listening on SoundCloud

 

Agust Dの最初のミックステープ「Agust D」BTSのどのアルバムより率直で生のエネルギーが生きている作品だ。このアルバムの独特なところは、音楽のジャンルやサウンドよりも、態度それ自体でアピールするという点だ。ヒップホップに基盤を置いたアルバムだが、ラップの細かいテクニックや音楽的な慣習にとらわれることなく、相当荒々しく切々とした心の中の生の感情だけが伝わってくる。このアルバムは自伝的だ。大邱で生まれ、音楽に夢を抱いた一人の少年が練習生になり、もうすぐ成功の果実を収穫するアイドルに成長するまでの過程が通り過ぎていく。そのなかで「The Last」はシュガのキャリアを論じるときに決して外せない曲だ。ドラマチックな雰囲気やビートのような音楽的なディテールより、曲の持つ生のエナジーと率直さに注目する必要がある。自らを賭けた自己嫌悪と憂鬱な感情を隠すことなく告白するが、それと向き合う方法は自嘲的であるとともに希望的だ。彼はその間の憂鬱さに飲み込まれるよりもそれを勝利のプライドとして転換する方法を選んだ。最初で最後に、そのなかのすべての鬱憤と怒りを最も荒々しい方法で注ぎ込み、混乱に満ちた若い時期の一ページをそうやって終わらせるのだ。

 

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mono.,これほど知的な矛盾

RM - Rap Monster by BTS | Free Listening on SoundCloud

RM - mono. by BTS | Free Listening on SoundCloud

 

BTSのリーダーであるRMは「RM」と「mono.」二枚のミックステープを通じ、証明したかったラッパーとしての孤独で知的な、同時に二重の自我を探求するミュージシャンとして常に進化している。最初のソロ作である「RM」は「Rap God」や「冗談」など、重度高いヒップホップのトラックに象徴される作品。特に自身の能力と技術を余すことなく注ぎ証明しようとする、かなり攻撃的で挑発的な面を持った若いラッパーの覇気が切々と流れている。疑いと嘲笑に向き合うアイドルラッパーの怒り、同時にアイドルという道を選んだ自分が、自覚しない深いところに自己嫌悪という矛盾した気持ちを攻撃的で時には知的な方法で溶かし込む。「mono.」ではミックステープではなくプレイリストという言葉を使いながら、ラッパーというアイデンティティーを超えて一人のミュージシャンとして進化したいという意志が漏れ出した秀作だ。どの場所にも完全に属することが出来ない異邦人としての情緒がもの悲しく漂う「tokyo」と「seoul」の対比でも現れるように、この音盤の最も重要なテーマはまさに人間の二重性(duality)である。ロック調の「badbye」と「everythingoes」でも現れているように、このアルバムはミュージシャンとしての多彩さを見せながら、同時に極めてリリカルな曲たちを通して、RMが持つ文学的で芸術的な才能の厚みをようやく出し始めた重要な作品として記録されるだろう。そのなかでも白眉はやはり「forever rain」であり、芸術家にとって孤独は哀しみではなく同伴者であるという事実をやっと悟り、思索的に美しく結末を迎える。

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Hope World、希望というパーソナリティー

j-hope - Hope World by BTS | Free Listening on SoundCloud

 

J-hopeの「Hope World」はBTSの全ての仕事を通じて最も気持ちの良い驚きをプレゼントしてくれた作品だ。デビュー以降グループのダンサー及びラッパーとして注目されてきた彼だが、このアルバムを通じて一人のアーティストとして個性的な音楽世界を開くことが出来るという可能性を見せてくれた。ヒップホップをベースにしているが、どんなジャンルの枠に収まるよりも、多様な音楽をJ-hopeという楽しく肯定的なパーソナリティーと自然にマッチさせることが出来るということを見せてくれたのが印象的だ。ラテン風味を含んだ爽やかなダンストラック「p.o.p」、90年代の古典的なハウスバイブ「Daydream」、オールドスクールヒップホップの簡潔なバイブ「Baseline」、現代的な正統ヒッポホップの「HANGSANG」まで、簡潔で確信に満ちたアイデアたちが飽きる隙を与えずつながっていく。「Hope World」と最後の曲「Blue Side」の象徴的な対比からも見えるように、このアルバムはまるで外側に見える海の青さと同時に、その中に開かれた数多くの層を探索していく過程を表現している。まるで自身のなかに眠っていた、もしかすると自身も知らなかったアーティスティックな自我を発見する過程のように。そしてその探索はJ-hopeという無害なエナジーを通じ、何にも邪魔されない楽しくナチュラルさあふれる音楽で表現されるのだ。

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