はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

「自分を幸せにするもの、喜びをもたらすものを見つけなければならない」SUGA NMEインタビュー

www.nme.com

 

BTSのSUGA:「自分を幸せにするもの、喜びをもたらすものを見つけないといけない」
初のソロツアーとソロデビューアルバム「D-DAY」を控えたBTSのラッパーが、Agust Dの分身と今を生きることの重要性についてNMEに語る。
By Rhian Daly
24th April 2023

 

Agust Dの怒り

「正直なところ、幼い頃は自分が被害者であるという意識がありました」BTSのSUGAは、手にした大きな段ボール製のカップから一口飲んで言う。ラッパー、プロデューサー、ソングライターである彼は、NMEとのビデオ通話で、自身の分身であるAgust Dについて話す。「この名前を思いついたのは、自分の中に[この]憎しみ、[この]怒りがあったから[...]その怒りをコントロールできなかった」

 

2016年、セルフタイトルのデビューミックステープで初めてAgust Dを紹介したとき、SUGA はこの別名を、その激しい感情を表現するための手段として使った。故郷の大邱で何年も情熱的に音楽を追求してきたが、2013年にBTSでデビューしたとき、K-POP界以外の他のアーティストやファンから拒絶されるのを感じ、ラップをする資格もボーイバンドのメンバーであることを真剣に受け止められなかった。

そのため、ソロ活動初期のミックステープには、自分を拒絶する人たちよりも、強力で獰猛な存在として位置づける辛辣なセリフが満載だった。このアルバムのタイトル曲では、「俺は成功から遠ざかっているヒョンたちのとげとげしい存在なんだ」と、そんなリリックを口にしている。

あなたはりのままで十分だし、自分自身で愛されるに値すると言いたいのです。僕自身にもそう言っています。

成長し、年を取り、多くのことを経験する中で、腹の中で燃え上がる火をコントロールする方法を学ぶことがよくあるが、「Agust D」からの7年の間に、SUGAはその旅に出たのである。


変化と成長

2020年のミックステープ「D-2」での魂の探求から、ソロ・デビュー・アルバム「D-DAY」まで、彼のソロ音楽の進化にそれを辿ることができる。J-hopeをフィーチャーした影のある「HUH?!」で、彼は「俺のことを知ってると思ってるなんてクソくらえだ」と宣言している。しかし、BTSの同名曲のヴァースで始まり、新譜の最後を締めくくる「Life Goes On」は、より静謐なトラックであるなど、安らかな曲もある。

2016年以降、彼とAgust Dに変化があったことは確かだが、彼はそれが自分の人生が変わったからだという解釈は否定するー「僕はまだBTSのSUGAとして生きているし、個人としてはミン・ユンギだ」と彼は理由を語る。
「依然としてBTSのSUGAとして、そしてミン・ユンギとして生きています」 「物事が変わり、状況が変わり、人は変わるしかないのです」「誰もが変わる。でも、大切なのは、その変わり方なんだ」そう言うと、小さく苦笑いを浮かべた。 「僕は、とてもうまく変わったと思います」。

今に集中する

SUGAがここ数年で経験した変容のひとつーーそれは「D-DAY」全体に通じるものだがーー過去の後悔や未知の未来に思い悩むよりも、今を生きることに集中しようというラッパーの姿勢である。

「今生きている人生の主体であるべきだと思うんです」と彼は説明する。「“未来の僕は、この大きな家、いい家に住むんだ "と思うかもしれませんし、もちろんそれはいいことだと思います。でも、その過程で、一番大切なのは自分だと思うんです」。彼は席を少し前傾させ、目を見開いて次のポイントを強調する。「未来の僕は、今の僕に集中すべきだと(僕は)言いたいのです」。

パンデミックにより、私たちが日々、数週間、数カ月、数年先をコントロールできないことが、耐え難いほど鮮明になったとき、SUGAはこの視点を取り戻した。BTSのメンバーにとってそれは、すでにチケットを販売し、準備を始めていた「Map Of The Soul」ワールドツアーの中止を余儀なくされたことを意味していた。「"今、この瞬間にできることは何だろう?"と考えました」と彼は言う。自分自身への不安や「痛いこと」をリストアップした結果、練習生時代にバイク事故で負った古傷の肩を何とかしようと思い、手術を受けるという、今この瞬間に自分だけが担当する行為に踏み切った。

 

アルファベットを覚えるように、幼い頃から幸せの見つけ方を教えなければならないのに、僕たちはそのように学んでこなかった。

 

 

孤独への解毒剤

今に集中することは、現代社会のストレスや緊張に少しでも耐えられるような生き方をするためのサバイバル戦術のようなものだと言えるだろう。SUGAの中では、愛もまた、耐えるための手引きの一部であり、IUとのコラボレーション曲「People Pt.2」で詳述した孤独への解毒剤なのだ。

「僕はただ、人々が単純に愛することを望みます 」と彼は言い、それは必ずしも他の人と恋に落ちる必要があることを意味しないと説明する。「コーヒーを愛するような単純なことでも良いし、インターネットのコミュニティを愛することもできる。でも、僕はただ、人々が人々を愛してくれることを望んでいます」。

「D-2」の「People」の姉妹曲である「People Pt.2」の優しく心地よいブームバップは、孤立を感じている人に慰めと連帯感を与え、SUGAはこうラップで表現する
「我慢できないなら、泣いてもいいんだよ/君はもう十二分に愛されているんだ」。

彼はこの歌詞をNMEに引用し、ため息混じりに首の後ろをさする。「"君はありのままの自分で十分だし、自分自身で愛されるに値する”と言いたいんです」「そして自分自身にも言っているんです。誰もが生まれた瞬間から死ぬまで愛されることを願うばかりです」。

奴隷にならないために

毒気が蔓延しているように感じられるこの世界で、この言葉は力強いものだ。私たちは慢性的にネットに囲まれた生活を送り、分裂的な誤報を目にし、ソーシャルメディア上で他人と自分を比較することで、簡単に消耗してしまう。

「D-DAY」のメイントラック「Haegeum」は、「資本主義の奴隷、お金の奴隷/憎しみと偏見の奴隷/YouTubeの奴隷、フレックスの奴隷」と、私たちの存在を解放するための叫びを提供している。「この曲はヘグムだ」とSUGAはサビでラップし、解放を意味する韓国語と、この曲でフィーチャーされている伝統的な弦楽器を用いている。「今すぐ乗れ」。

この曲は、より広い世界へのメッセージであると同時に、自分自身へのメッセージでもあると、彼は改めて指摘する。

「僕は資本主義、YouTube、お金の奴隷だ。そうならないために、自分自身にそう言わなければならないんです」と彼は言う。

彼は、今の時代、音楽が社会に大きな変化をもたらすことができると本当に思っているのだろうか?彼は不敵な笑みを浮かべてこう答える: 「音楽は確かに力を持っているが、私たちは自由にはなれません」。それでもすべての希望が失われたわけではない。「他人の意見をあまり意識しない」「自分が幸せになる方法を見つける」ことで、私たちはまだ解放される可能性がある。

彼の恋愛観と同じように、幸せは大きくて複雑なものである必要はない。「食べることで幸せになれるなら、ただ食べればいい。「音楽を作ることで幸せになれるなら、ただ音楽を作り続ければいい。あまり意味を持たせる必要はないのです」。

もし、この「はかない感情」を見つけることを子供の頃から教え込まれたら、僕たちはもっと良くなるのではないか、と彼は提案する。

「幼い頃から、アルファベットを覚えるように、幸せの見つけ方を教える必要があるのですが、僕たちはそのように学んでいません。賢い人たちは、実際に、本当に、本当に速く方法を見つけるのです。だから僕たちも賢くならないといけないんですー「幸せになれ」と言っても、幸せになれませんー何が自分を幸せにするか、何が自分に喜びをもたらすかを見つけなければならないのです」。

ワールドツアーと旅

来週から、SUGAは初のソロツアーを開始し、米国とアジアのARMYにさらなる喜びをもたらすことになる。BTSのメンバーでこのようなツアーに参加するのは彼が初めてで、いくつかの訪問先では、以前グループで公演した会場に戻ってくる。「BTSのメンバーで初めてソロツアーを行うことに加え、様々な国で複数の公演を行うワールドツアーは久しぶりなので、より興奮しています」と彼は語る。

ツアーポスターは、ミュージシャンの顔が2つに分かれており、片方は大きく青く、もう片方は大きくオレンジ色に染まってる。左上には「SUGA」と「Agust D」の文字があり、2部構成で行われるライブを暗示している。まだ詳細は明かせないが(「あまりネタバレすると面白くなくなる」)、彼は第3部もあると言う。

「このツアーでは、SUGAとAgust Dはアーティストとして、ミン・ユンキは一人の人間として見せます。"SUGA、Agust D、ミン・ユンギの燃え上がるツアー "といったところでしょうか。あえて言うなら、これまでのBTSのツアーとは全く違う、みんなの想像を超えたツアーになると思います」。

Disney+とWeverseのドキュメンタリー映画『Suga: Road To D-DAY』は、彼がアメリカでの最初の旅に向かう準備をしながら、よりパーソナルで異なる種類の旅程を捉えている。この映画は、ソロアルバムのための新鮮なインスピレーションを探しながら、アメリカ、韓国、日本を横断するアーティストの旅に密着している。NMEやドキュメンタリーの中で、彼は以前は旅行が好きではなかったと告白しているが、この旅は彼に新しい発見と貴重な体験を与えてくれた。

「旅に喜びを見出すこと自体が、僕にとっての新しい発見でした」と彼は説明する。「それに、コラボレーションする機会があったり、個人的にとても親しかった海外の著名なミュージシャン(Halsey, Steve Aoki, Anderson .Paak, 故坂本龍一が映画の中でSUGAの訪問を受けている)と本物の交流を持つことで多くを得ることができました。アーティストとして、また人から人への大きな学びとなりました」 。

この旅で彼は、「新たなインスピレーションと刺激を得る」という目的を達成したと考えている。

今後数週間、数ヶ月はラッパーにとって忙しくなりそうで、今年末には兵役に就く予定だが、SUGA は「D-DAY」のメッセージに忠実に、今に集中する。「最近は、初のソロアルバムとソロツアーの準備で忙しくしているんです。たぶん、ツアーが終わるまで、こうして忙しくしていると思います。ARMYに会えるすべてのステージでベストを尽くし、そのために健康管理にも気を配ります」。