はちみつと焼酎

BTS 방탄소년단/SUGA. 日本語訳など

HYBE・パン議長とJYPのユークイズ(抜粋訳)

23.11.1.に放送された韓国のバラエティー番組、YOU QUIZ ON THE BLOCK EP.217に、
BTSの生みの親で、現HYBE議長のパン・シヒョク氏と、JYPエンターテインメントのJYPことパク・ジニョン氏がゲストで登場。KPOPの過去と未来を語りました。

パンPDはBig Hitを創立する前はJYPのプロデューサーであり、経営にも加わっていました。

これまでこのブログでパンPDの話は取り上げてきたので、今回もご紹介。字幕をつけようと思ったのですが著作権でブロックされたので、独断で面白かったところを抜粋します。

 

 

BTS全員の再契約

www.youtube.com

3:00

パン:BTSほどのアーティストたちには選択肢が多いですよね。彼らが私たちと再契約を選んでくれたことそのものが、マネジメントの責任者として、またレーベルの責任者として、ある意味BTSと仕事をしてきた歴史を認めてくれて、私たちがBTSによくやったということを、 十分に認めてくれたということなので、それが称賛されたような気分でした。
実際、いつも良いことばかりお話ししてるみたいですが、ほとんどの過程は調整する時間じゃないですか。なので、その時にBTSのみんなが「それでもヒョンを信じて もう一度行ってみます」と言ってくれたその2週間は、本当に自分がマネジメントという仕事を選んで以来、20年以上やってきましたが、一番幸せな期間だったと思います。本当にストレスがない日というのは、こういうことなんだなと。

二人の出会い

6;04~

JYPのプロデューサーを探しているときに、電話をもらったというパンさん。当時韓国の音楽はあまり聞いておらず、JYPのことは「ビニールのパンツの人」としか知らなかったと。
オファーを受けたときにぶすっとしながら「で、僕に何をしてくれるんですか?」と聞いたらしい。生意気な学生だったんですね。
でもJYPはむしろそういうところが気に入ったらしいです。

JYP:人に会ったときに、シヒョクが無表情なんです

パン:恥ずかしいんです

JYP:そう、恥ずかしがってるんだけど。
僕がそういう人がすごく好きなんです。目がキラキラして愛想がいい人はかえって怖いんです。
(中略)そのときのシヒョクが、いまとそのまま同じなんです。
当時、周りにシヒョクを紹介するじゃないですか。全員がその後で「なあ、あいつ何なんだ?」とこう言うんです(無愛想だから)。100人が100人全員が!
パン:本当にそうでした。

(中略)

パン:今も経営陣に何て言われるかというと、「あなたは口先で千両の借金をつくる才能があるよ」と。
JYP:いや、口先じゃなくて表情、無表情で!
パン:「借金をつくってきそうだから、表に出ないでくれ」って

JYP:シヒョクと会う世界のみなさんに言いたいんですけど、成功したから(そんな態度)じゃないんです。元々なんですよ。新人のときから。

パン議長ってすごく経営の才があるのかと思ったら、そういうことじゃないみたいです。

 

パン議長が語るBTSの道のり 

www.youtube.com


一度だけシヒョクを叱ったJYP

パン:音楽もだめ、ビジネスもだめで、当時事務所にいたみんなとニンテンドーのテニスゲームをしながら過ごしていました。そのときジニョンヒョンに会って言われたんです。

「この一年何度か会ったときに言おうかどうしようか迷って『自分でなんとかするだろう』と言わなかったんだけど、お前、どうして俺と会ってビジネスの話ばっかりするんだ?俺はお前と音楽の話をしたいんだよ。お前はミュージシャンだろう」って。

あまりに衝撃的でした。その通りだと。自分は何をやってるんだと思ったんです。

その後、JYP所属の2AMのプロデュースの仕事で一息ついたパンPDですが、また経営危機に(ここらへんは、Beyond the Storyに出てきますね)。

1:23~

パン:そのときは本当に酷く失敗して、会社をたたまないといけないかと思いました。そのとき準備していたのがBTSでした。

そして副社長に聞かれたんです「自信がないのか?」と。

いや、メンバーたちには自信がある。でも借金が百数十億ウォン(テロップによると160億ウォン)あって、想像を超える額だったんです。

副社長が「もうすでにあなたの力では返せない額だよね。でもこのチームを一年やってみたとしても、返せないのは一緒じゃないの」と。

そうですよね。百数十億の下の数字が1だろうと2だろうと…

JYP:120億だろうが150億だろうが。

パン:その副社長が「本当に自信があるのなら、やってみるのが正しいと私は思う。ただ責任を取るのはあなただから、私はやれともやめろとも言えない」と。

それで悩んだんですが……やってみるのが正しいと思ったんです。

この後のVTRにかぶせられてるのパン議長の声はこちらの番組から。

7人のメンバーがそれぞれ才能と実力を持っていたし、このような実力を持っている子たちをそのままにしてはおけないと、一種の使命感を感じたのは事実です。

 

BTSアメリカ市場への賭け

この後、世間ではBTSは最初は上手く行かなかったと思われているが、実際はそんなことはなく、新人賞も全部獲ったし最初から上手く行ったというパン議長の話。

3:07~

「これはいままでとは違うぞ」と思った瞬間はありましたかという質問に、まずは2014年にLAで開かれたKCONでの反応を挙げたパン議長。しかし会社の経営陣には相手にされなかったらしい。

BTSのデビューのころから、「会社が倒産寸前まで行ったのは、自分が経営していたせいだ」と悟り、経営の一線から身をひき、プロデュースに集中していたというパンPD。しかし2015年、「花様年華」の世界的なヒットで賭けに出ます。

パン:これは(いままでとは)違う。いままでのKPOPでこんな反応はなかったと確信したんです。

いま、アメリカ市場をテストしなきゃいけないアメリカ向けの曲でどんな反応があるか見るべきだと。

会社は大騒ぎです。「ついにまたこいつが経営に干渉する気だ」と。「潮が満ちてるときに漕がないといけない。韓国でヒットしたのにどうしてアメリカ向けなんだ」と。

それで会社(の経営陣)とすごくけんかしたんですが、今回だけは自分も譲れなかった。
それで「Fire」という曲を出しました。米市場向けに。

それが、グローバルで爆発しました。

成績などを分析し、「ワンダイレクション」ぐらいまで行けると見通したそうです。メンバーからは「あまりにも大変でもうろくしたのか」と思われたそうですが…

パン:その後は本当に…運命に導かれたと思います。そういう運命に導かれて…そこで僕が何か価値を、いまのBTSを自分が作ったんだなんていうと余りに傲慢です。

「良く分からないけど有名な」戦略

5:57~

その後のワールドツアーは1年半ほど前から計画したそうです。そのときの戦略が「有名だから有名」というもの。

パン:南米での反応をNYに素早く知らせれば、私たちがNYに着く頃に、NYの人たちは「何がそんなに大騒ぎなんだ?」と思うだろうと。アメリカのスタッフと準備をしました。メンバーたちもよくやってくれたし、運もあってその通りになりました。

南米ではレギュラー番組を中断して中継するほどの反響があったので、NYでは「一体何だ?調べてみよう」となって。

それでTVやラジオのプロモーションを回りました。

LAに着く頃には「BTSがなぜ人気なのかは知らないし、BTSについてもよく知らないでも有名だって言うから、自分もこの経験をしてみよう。それがイケてるらしい」という状況になったんです。

実際コンサートに俳優や有名な芸能人やその子どもたちがすごくたくさん来たんです。それがSNSで拡散されました。

BTSはJYPからすると「甥っ子」

7:58~

パンPDがいなかった授賞式で、パンPDの代わりにBTSにお祝いの乾杯をしに行ったというJYP。

JYP:いつも(BTSを見ていて)そんな気分なんです。なんというか…甥っ子?
彼らは僕をそんな風に考えてはいないでしょうけど、僕の立場からすると。

パン:彼らを私の子どもだとは言えませんけど、比喩的に言えば甥だと言えますよね。そんな関係ですから。

韓国での甥っ子とおじさん(サムチョン)の関係は、日本よりずっと近くて濃いイメージです。韓ドラ見てるとやたらとサムチョンが出てくる。

 

BTSにとってパン議長はどんな存在?

BTS出演した回の未放送分から

JIN:頼れる気楽なヒョン

J-hope:もう少し…仲良くなりたいヒョン?

Jimin:ちょっとダイエットすればいいのに、と思うヒョン

SUGA:先を行く人。ビルボードに行く前から「ビルボードに行きそうだ」、一位になる前に「一位になりそうだ」と

RM:2014年ごろ、僕たちがまだ水面下でもがいているとき、年末だったかな?僕たちをあつめて大賞がとれる、と言ったんです。そのときどんな気分だったかというと…

SUGA:内心「え~い、え~い」

RM:なんというか…ちょっとおかしくなった?

SUGA:正気じゃない

RM:でも本当にそうなったんです。

(元の質問に戻って)

JungKook:議長さん?

RM:シベリアから来る気圧みたいな…。常に方向や季節を変えてくれる人なので。

V:ウリ(僕たちの)ヒョン?

 

K-POPの危機について

www.youtube.com

 

パン:HYBEという会社の責任を負う立場では、投資家たちがいるので、これを明日すぐにどうにかないろうだとは言えませんし、実際そういうことではありません。ただ、最近の主要市場での指標下落がすごく目立って見えます。

私が言う危機論の根幹には、非常に強烈なファンダムの消費というものがあるんですよ。 定義的にスーパーファン(強火ペン)と呼ぶ人々は、実はラテンやアフロビートにもたくさんいます。でもK-POPファンの方がはるかに強烈にのめり込んで、もっと消費を、マッシブな消費…集中的な消費をするんです。

でもそれが逆に言えば拡張性の限界でもあるんです。
なせかというと、みんながアーティストを そんなには愛せないじゃないですか。
ある人はただ曲が出たら、「あ、そうだ、あの人が好きだったんだ」と聞こうとする人もいるし、コンサートが来るのなら、一度は見に行こう、こういう消費者もいないといけない。

ほとんどのアーティストはスーパーファンが(中心に)いて、そこにその人たち(ライトファン)がたくさんくっついているんですが、KPOPにはこれがない。
ほぼこの(中心)があるだけなんですよね それで周辺部のライトファンダムもたくさんくっつくことができる構造にならないといけないというのが 基本的な私の考えです。

JYP:一番大きな悩み、根本的なものは「広げること」です。ファンを広げることなので、それで段階的にやってきたんです。

パン議長が「KPOPの危機」について語った動画がこちら。日本語字幕を入れています。

www.youtube.com

 

この後、KPOPのグローバル展開についての話。多国籍チームや、各国で行っている現地のKPOPシステム。アメリカからデビューさせようとしているグループについて。

 

 

性格は違うバディな二人

お互いリスペクトしてるんだな~という二人の関係。

 

 

二人の曲作りの話。二人の曲作りは、JYPの頭にある音を口で表現し、それをパンPDが具現化する、という工程だそう。「サー、じゃなくてチュアー!」というと、その音を探して出してくると。
「パンさんはすごく大変でストレスだったでしょうね?」という司会のユ・ジェソク氏に、パンPDは「いや、実際に音にすることより、音を頭のなかでつくるということが大変なんです。僕は学生みたいに教わったんです」。

「パン議長はJYPのゴーストライターで、JYPは本当は曲を作ってない」という噂について「全く違います」とパン議長。

 

アメリカ進出に挑戦した頃の話

www.youtube.com

アメリカでの靴下事件の話はこちら。その後JYPは大失敗して借金をつくり、パンPDは独立してBigHitを作ることに。面白いけどここは割愛。

 

哲学的な話を朝まで

www.youtube.com

 

アメリカで頑張っていたころ、一つの話題を夜通し語り合ったという二人。どんなテーマかというと。

JYP:いまも覚えているのは、シヒョクが「ヒョン、家族の誰かが死んだら、どこまでが本当に悲しくて、どの分が『悲しまなきゃ』っていう無意識の分なんだろう」と。それを聞いて僕はすごく考えるんです。これを夜中の3時、4時まで話し合う。テーマはどんなことでも。「友だちとは」「論理とは」とか。それで二人でずーっと話が尽きないんです。

パン:実は私はひねくれた考えをすごく持っていたんです。すごく間違えた考えを。

例えばヒョンとこんな話をしました。「良い映画とは何だろうか」。

ジニョンヒョンは「多くの人に感動を与える映画じゃないかな」と。私は「そんなのは幼稚だ、浅い」と。「良い映画は難解で複雑な映画だ」「大衆向けのなんて軽薄だ」と、こんなひねくれた考えをしてたんです。それで会話をしてばっさりやられました。間違ってると。

そのときはプライドもあったので、認めたくなくて…

JYP:3、4時間も話して…
パン:(自分の考えが間違っていたということを)ヒョンが全部教えてくれたんです。

 

一方のJYP

JYP:今も覚えているのが、「ヒョン、人が論理で説得できるだろうか?」と。
当時は「あたりまえだよ。説得できるだろう」と。でもそのシヒョクの言葉が20年、頭の中にあるんですよ。それでだんだん分かってくるのが(説得)できないってことなんです。

人は論理では説得されないんですよ。ただ僕自身はそういうタイプだっただけ。シヒョクが正しかったんです。

(司会:どうしてそんな話を?)

パン:私はある種の不可知論者なんですが、自分の外側の世界を人間は知ることができない。与えられたデータの形で認識しているだけだと思ってるんです。
逆に言えば、各自の世界だけで正しくて、おのおのは別のものを見ているかもしれない。論理というのは数字でだけの話で、特定のファクトを語る言葉でなければ成立しないんです。

世界がどんな風に成り立っているのかさえ、違って認識している人間同士で、論理が通用しない部分でどれだけロジカルに話そうが、その人にとっては知らない世界じゃないですか。そういう話をしたんです。

当時ヒョンは、いわゆる言葉で、正しいことを言えばいつかは人を説得できると言っていたし、私は「正しい」という基準自体がないんだという話をしたんです。

高学歴二人(JYP延世大、パン議長ソウル大)の会話~。司会の二人若干置いてけぼり(笑)。

ユ・ジェソク:僕たちがこんな話になったら『ヒョン!その通りです!』『よく分からないけど、ヒョンが言うならそれが合ってます!』

チョ・セホ:それがそのまま法です!そのまま従います!となりますよ~

めっちゃ韓国で聞きそうな会話だ。

 

最後。パン議長のソウル大の卒業式に招かれたJYP。壇上でパン議長の名前が呼ばれ「文科の次席」だったそうです。

JYP:あまりにも憎たらしい。僕は6年かけて、警告をたくさん受けながら大学をやっと出たのに。しかもシヒョクは僕の会社で仕事をしながらなんです。「おい、いつ勉強してたんだ?」って聞いたら「勉強なんかしてませんよ」って。